台湾を代表するモデル・俳優である林志玲さん(EXILE AKIRAさんの妻)は、その華やかなキャリアの裏で、台湾と中国の間で繰り広げられる政治的板挟みに苦しんできた。彼女の過去のSNS投稿がきっかけで、「親台」か「親中」かという二者択一を迫られる「踏み絵」となったのだ。
林志玲への批判とその背景
問題となったのは、林さんが中国の国慶節を祝う過去の投稿。これに対し、台湾の一部ネットユーザーから「親中派」との批判が殺到した。しかし、台湾社会では、このような単純な分類は現実にそぐわないとの見方も少なくない。
ジャーナリストの高橋正成氏によれば、今回問題視された投稿は、中国市場での活動を維持し、芸能活動を円滑に続けるための「政治的カモフラージュ」という側面が強かった可能性がある。実際、林さんは過去に中国寄りの人物から「台湾独立派」と批判された経緯もあり、中台の板挟みの中で自己防衛のために取らざるを得なかった行動と見られている。
慈善活動と台湾政府の擁護
林さんは長年にわたり台湾社会への慈善活動を続けてきた実績がある。自身の基金会を通じた児童支援に加え、台湾社会や文化分野への具体的な貢献を積み重ねている。そのため、台湾政府内でも林さんを擁護する声が上がった。行政院や大陸委員会関係者は、「中国での圧力を経て台湾に戻り、台湾のために働こうとしている。台湾のために行動する身内を歓迎しない理由はない」と評価していた。
「親台」「親中」という恣意的な尺度
台湾に存在する「親台」「親中」という尺度は恣意的であり、芸能人にとっては常にリスクを伴う。中台関係の緊張が続く中、芸能人や文化人の過去の発言を巡り、特定の政治的立場や“純粋性”を過度に求める現象は、台湾と中国の双方で見られている。
台湾では、一部の独立派や本土派勢力の中に、台湾の主権やアイデンティティに対し非常に厳格な基準を求める層が存在する。今回の事件を巡っても、一部の親・民進党系論者や独立派団体からは、「台湾に戻ってきた芸能人への表彰のようだ」「主権意識をあいまいにする」といった批判が上がった。彼らにとって、公的役職に就く人物には思想面での“純潔性”や台湾への明確な忠誠姿勢が必要だという考え方がある。
台湾系芸能人の生存戦略
「独立か統一か」という形式的な思想ラベルよりも、「台湾への愛着を持ちながら、中国市場では現地ルールに従わざるを得なかった」という、台湾系芸能人特有の生存戦略として理解すべきだという見方が自然だ。林志玲のケースは、その典型例と言えるだろう。
中国からの圧力
一方、中国側からの圧力も無視できない。中国市場で活動する台湾芸能人は、中国政府の意向に沿った発言を求められることが多い。林志玲も例外ではなく、中国の国慶節を祝う投稿は、そうした圧力への対応の一環だった可能性が高い。このような状況は、台湾芸能人にとって常に緊張を強いられるものである。



