国際刑事裁判所の赤根所長、存続の危機訴える 「私たちは負けていない」
ICC赤根所長、存続の危機訴える 「私たちは負けていない」

戦争犯罪や人道に対する罪などを裁く国際刑事裁判所(ICC)で日本人初の所長を務める赤根智子氏(70)が7月、大阪市中央公会堂(北区)で講演した。米国のトランプ政権がICCの「解体」を主張するなど政治的圧力が強まっており、赤根氏は講演後の取材に対し、「存続の危機にひんしている。日本からも手厚い支援をお願いしたい」と訴えた。

法の支配「最後の砦」

「ICCは今や(国際秩序を支えてきた)『法の支配』の最後の砦となりつつある。多くの支援が不可欠だ」。赤根氏は講演で約350人の聴衆に語りかけた。

ICCは2002年に設立され、オランダのハーグに本部を置く。国連機関ではなく、条約の加盟国が運営する刑事裁判所で、戦争犯罪や侵略犯罪などを犯した「個人」を裁く。日本を含めて125か国と地域が加盟し(7月現在)、米国やロシアは加盟していない。

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愛知県出身の赤根氏は1982年に検察官に任官し、最高検検事などを歴任。2018年にICC判事に就任し、24年3月に所長に選出された。

政治的圧力への対峙

ICCは24年11月、イスラエルのネタニヤフ首相に対し、ガザでの戦争犯罪などの容疑で逮捕状を発付した。同国に協力してきたトランプ政権は反発。ICC裁判官らに制裁を科し、今年7月には国務長官が米紙への寄稿で「あらゆる手段でICCを解体する」と主張した。

また、ICCが戦争犯罪の疑いでプーチン大統領に逮捕状を発付した報復として、ロシアの司法当局は25年、赤根氏を含む裁判官ら9人に有罪判決を言い渡した。

政治的圧力が強まる中、赤根氏は取材に「米国による制裁後もICCは着実に裁判を進めており、運営面の支障は出ていない。危機ではあるが、私たちは負けていない」と力を込めた。米国に同調してベネズエラが脱退を表明するなど、今後も加盟国が抜ける可能性がある。「法の支配は時間をかけて、多少のジグザグを経て進めるべきものだ」と、困難に負けず前進していく覚悟を示した。

平和への思い強く

一方、ICCでの業務を通じて「平和への思いが強くなった」と語る。戦禍に見舞われたアルメニアや原爆が投下された広島を訪れた際、戦争被害者や被爆者から体験談を聞いた。「人々に共通するのは、『相手を憎むのではなく、二度と戦争をしてはいけない』という願いだ。加害者側にも深い傷を残す戦争を繰り返してはならない」と強調した。

任期は27年3月まで。残された期間は短いが、「『立つ鳥跡を濁さず』で最後までやり切りたい」と固い決意を胸に、ほほ笑んだ。

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