国際刑事裁判所(ICC)の赤根智子所長は9日、米国がICC本体への制裁発動に踏み切ったことに対し、ビデオ声明を発表して抗議した。声明全文は次の通り。
「制裁は断固拒否する」
本日、米国は歴史上前例のない措置として、国際刑事裁判所(ICC)という機関そのものに対して制裁を科しました。裁判官や検察官を対象とした一連の制裁指定に続くものです。当裁判所は、これらの制裁を断固として拒絶します。私自身、ICCの裁判官として断言しますが、当裁判所は政治的な動機に基づいて動くことはありません。私たちは独立かつ公平な司法機関であり、法と証拠に基づいて行動しています。法廷の責務遂行を妨げようとする行為は容認できません。
「法の裁き待つ被害者」
それは、当裁判所を設立した主権国家への攻撃であり、国際法の秩序に対する攻撃です。残虐行為の責任者に対する裁きを何年も、時には何十年も待ち続けている被害者への攻撃でもあります。当裁判所に対する措置は、こうした被害者たちに影響を及ぼします。当裁判所は、各国の司法制度に取って代わるものではありません。国家が真摯(しんし)に捜査や訴追を行う意思がない場合、あるいはその能力がない場合にのみ行動する「最後の拠(よ)りどころ」なのです。裁判所の管轄権は、世界の法制度に共通する原則に基づいています。国家は領内で罪を犯した者や、自国民によって犯された罪について裁きにかけることができるということです。ローマ規程(ICC設立条約)への加入により、締約国は当裁判所を通じて権限を共同で行使することを選択したのです。
「脅しには屈しない」
はっきりさせておきましょう。ICCは、国際社会が懸念する最も重大な罪を犯した者にだけ利益をもたらすような、外部からの脅しには屈しません。被害者のために独立性と公平性をもってその責務を完全に遂行するという、当裁判所の揺るぎない決意を私は改めて表明します。今回の制裁は当裁判所の業務を妨害し、裁判所で働く人や協力者を威嚇することを意図したものです。当裁判所としては、決してひるむことはありません。しかし、裁判所は単独で存続することはできません。その運命は今や、裁判所を設立した各国に委ねられています。ローマ規程は、国際社会全体が懸念する重大な犯罪を決して処罰せずにはおかないという誓約です。その約束の重みは、それを誓った人々の決意の強さにかかっています。
「活動継続へ行動を」
困難はあるかもしれません。しかし、当裁判所は締約国と協力し、その活動を継続するために多大な努力を重ねてきました。各国に対し、活動継続のために必要な手段を確保することを含め、具体的な行動をとるよう求めます。これはひとつの機関を守るという問題ではありません。「法の支配」に基づく国際秩序を守れるかどうかという問題です。私たちは今、選択せねばなりません。「力が正義」という世界か、それとも「法の支配」に基づき、被害者が正義を求めることのできる未来か。こうした攻撃に直面し、私たちは無関心でいるわけにはいきません。締約国を含めて私たちには、国際秩序を守るために行動するという法的かつ道徳的な義務があります。力ではなく、法を擁護するために。今日下す選択によって、私たちは歴史の審判を受けることになるでしょう。ICCが「正義は必ず実現される」という固い決意のもと、その活動を継続していくことを約束します。ありがとうございました。