希望から幻滅へ、デモが映すマクロン政治の10年 欧州総局長の視点
希望から幻滅へ、デモが映すマクロン政治の10年

フランス全土に再び広がった24日のデモの現地映像をみて、懐かしい姿を見かけた。ジレジョーヌだ。フランス語で「黄色いベスト」と呼ばれた人々で、初めて会ったのは2018年にさかのぼる。当時、マクロン政権が燃料税を引き上げると決めたことに抗議し、このときも全土にデモが広がった。

黄色いベストが映した二つの世界

黄色いベストは車に備え付けておかないといけないので、運転する人はみんな持っている。それを着て毎週末、交差点でデモ活動を繰り広げたのがジレジョーヌ、つまりはフランスの市民だった。

8年前の秋、パリ特派員だった私はあちこちの地方の交差点に出向き、ジレジョーヌに会いにいった。円形交差点のまわりの草むらにテントを張り、ドラム缶に火をたいて暖を取り、コーヒーを差し出してくれたジレジョーヌ。大型トラックが応援代わりにクラクションを鳴らして通りすぎていった。

別の町では、やはり円形交差点の近くに小屋を手作りし、そこを拠点に垂れ幕を掲げ、行き交う車に連帯を呼びかけた。不満を表現しているのだけど、抗議する姿はどこか生き生きとしていた。私はジレジョーヌに引かれ、毎週末のデモごとに、フランスの地方を訪ねた。

地方の暮らしと中央の格差

ジレジョーヌの訴えは、車がないと暮らせない地方の暮らしに始まり、閉じた地元の産院、本数のまばらな鉄道やバス、ホームレスの若者がいる現実といった、生活全般に及んだ。

週末の夜、ジレジョーヌ取材を終えて地方からパリに戻るたび、轟音で過疎地を通り過ぎる高速鉄道や、深夜まで走るパリの地下鉄にバス、夜までまばゆいビストロを目にして、まるで二つの世界を行き来している気がした。

辞任迫るデモとマクロン氏の10年

自らの辞任を迫るデモを、マクロン氏はどんな気持ちで見つめてきたのだろう。彼は当時、就任2年目の40歳。国民から初めてはっきり突きつけられた「ノン」を前に、テレビ画面越しのマクロン氏の表情はやつれていった。

「普通の国」をめざしたマクロン氏。労働者を守る手厚い規制や社会保障のあり方を見直し、経済改革を進めてきたが、その政策は地方の不満を増幅させた。デモの広がりは、マクロン政治の10年に対する市民の幻滅の表れといえる。