欧州連合(EU)は4月25日、ロシアからの短期契約分の液化天然ガス(LNG)輸入を禁止した。この措置は以前から予定されていたが、イラン発のエネルギーショックでガス供給が不安定化する中、EUが実際に発動するか注目されていた。しかし、EUは予定通りこの措置を実行に移した。
ガス貯蔵率、過去5年で最低水準に
この結果、EUは歴史的なガス不足に直面している。欧州のガス事業者団体GIE(Gas Infrastructure Europe)のデータによると、EU27カ国の天然ガス貯蔵率は6月14日時点で44.3%と、過去5年間で最低の水準を記録した。国ごとにばらつきはあるものの、全体的に非常に厳しい状況にある。
非ロシア産ガスの開拓は容易でない
EUは非ロシア産ガスの調達を急いでいるが、代替供給源の開拓は容易ではない。カタールや米国などからのLNG調達を拡大しようとしているが、生産能力や輸送インフラの制約があり、短期的にロシア産ガスの穴を埋めるのは難しい。また、価格面でも競争が激化しており、アジア市場との争奪戦も予想される。
三菱UFJリサーチ&コンサルティングの土田陽介主任研究員は、「EUのガス禁輸措置は自らに拍車をかけたガス不足と言える。非ロシア産ガスの確保には時間とコストがかかり、冬場に向けて貯蔵率を回復できるかが課題だ」と指摘する。
エネルギー価格高騰と産業への影響
ガス不足はエネルギー価格の高騰を招いており、欧州の産業競争力に深刻な打撃を与えている。化学、鉄鋼、ガラスなどガス多消費産業では生産調整や操業停止を余儀なくされるケースが増えている。また、家庭向けの暖房費も高騰し、国民生活にも影響が及んでいる。
EUは再生可能エネルギーへの移行を加速するとともに、省エネルギー対策を強化しているが、短期的なガス不足解消には限界がある。域内のガス貯蔵施設の共同運用や、緊急時の需給調整メカニズムの強化など、新たな対策が求められている。



