50代の男性トラベルジャーナリストが、往復6.2万円という格安費用でハワイ島を一人旅した。東南アジアよりも安いと選んだ先で、彼を待っていたのは「圧倒的アウェイ感」だった。
クアベイで感じた孤独感
まず訪れたのは、映画「ホノカアボーイ」にも登場したクアベイ。大人気のパブリックビーチで、次々と車が押し寄せている。パーキングに10ドルかかるところを、入り口の係員にキャッシュしかないと言ったところ、「じゃあいいよ」とそのまま通してくれた。
ハワイ島屈指のビーチであるクアベイには、一人客はほかに見当たらなかった。日本人もいなければ、中年の男性もいない。そもそも一人客自体がいないのだ。ゲートの係員が一人でかわいそうだから徴収しなかったのではと勘繰りたくなるほどだった。ビーチそのものはいつまでも眺めていたいほど美しいが、身の置き場がなく、すぐに退散することになった。
ワイピオ渓谷とホノカアの歴史
気を取り直して向かったのはワイピオ渓谷。かつてカメハメハ大王が幼少期を過ごし、19世紀まで最大数千人がこの渓谷の谷間に暮らしていた。
当時のハワイの農業の中心はタロイモで、湧水が得られる土地はタロイモの栽培に適しており、利用価値が高かった。しかし、さとうきびのプランテーションの普及に伴い、土地の利用を含めてハワイの社会は大きく変動していく。タロイモといえば、ワイキキも元はタロイモ畑だった。タロイモについては池澤夏樹の『ハワイイ紀行』が詳しい。
ワイピオ渓谷の後は、日本人移民の町ホノカアを通る。ホノカアの名が広く知られるようになったのは映画「ホノカアボーイ」によるものだろう。主人公の岡田将生が働いていた映画館「ホノカアピープルズシアター」は閉まっていたが、保存状態は良好だ。この映画で松坂慶子が売っているマラサダが美味しそうだと筆者は述べている。
このシアターの近くには日系人が建てた古い建物が多く、歩いて楽しい町である。映画を観ていなくてもぜひ訪れることをおすすめしたい。
ホノカア本願寺とマラサダ
ホノカアでは、たまたまグーグルマップで見つけたホノカア本願寺を訪ねた。本堂は閉まっているが、隣の集会所で僧侶やボランティアの人々が何やら働いているので聞いてみると、フードバンクの準備だという。毎週金曜、かなり大規模に行っているようだ。日本人移民が構築した組織が現代も機能しているのだ。
ホノカアに行ってマラサダ気分になったので、有名店でマラサダをいただく。マラサダはポルトガルの菓子である。19世紀後半、ハワイ島北部でさとうきびのプランテーションが卓越する中、ポルトガル移民がマラサダをもたらした。その影響は今も残っている。
太平洋を隔てた日本はともかく、ポルトガルはハワイから非常に遠い。それだけに意外性があり面白いともいえる。



