メルカリは2018年に中国市場に参入したが、わずか2年後の2020年に撤退を余儀なくされた。その背景には、中国独自のオンラインフリマ市場の厳しい現実があった。
アリババと拼多多が支配する中国フリマ市場
中国のC2Cフリマ市場は、アリババグループの「閑魚(Xianyu)」と拼多多(Pinduoduo)が圧倒的なシェアを誇る。閑魚は2014年のサービス開始以来、月間アクティブユーザー数(MAU)が1億人を超え、中国のフリマアプリ市場でトップに立つ。一方、拼多多は2015年にスタートし、ソーシャルコマースの手法で急成長、2020年にはMAUが7億人を突破した。
メルカリは日本で成功したノウハウを中国に持ち込んだが、現地のユーザーはすでに閑魚や拼多多に慣れており、メルカリのUIや取引システムは受け入れられなかった。特に、中国のユーザーはチャット機能を通じて価格交渉を行うのが一般的であり、メルカリの「値下げ交渉は簡易的なボタンで」という仕組みは不評だった。
規制の壁と物流の課題
中国では、中古品取引に関する規制が厳しく、特に家電製品や化粧品などは厳格な品質検査が義務付けられている。メルカリはこれらの規制に対応するためのコストが大きく、利益を圧迫した。また、中国の物流網は日本と異なり、配送料が高く、特に地方への配送は時間がかかる。メルカリは送料無料のキャンペーンを打ったが、採算が合わず、撤退の一因となった。
さらに、中国では2019年から施行された「電子商取引法」により、個人間取引でも営業許可が必要になるケースが増え、メルカリのビジネスモデルに大きな制約が生じた。
日本市場での成功が仇に
メルカリの日本での成功は、ユーザーの高い信用とスムーズな取引システムに支えられていた。しかし、中国では信用システムが異なり、閑魚はアリババの芝麻信用(Sesame Credit)と連携することで、ユーザーの信用度を可視化している。メルカリはこうした現地の信用インフラに対応できず、取引のトラブルが多発した。
また、中国のユーザーは新商品の割引クーポンやセールに敏感であり、中古品を購入するよりも、拼多多などで激安の新品を買う傾向が強い。メルカリは「中古品を売る」というビジネスモデル自体が中国市場にマッチしなかったと指摘する専門家もいる。
撤退後のメルカリの戦略
メルカリは中国市場からの撤退後、日本市場に集中するとともに、米国市場への進出を強化している。2021年には米国での売上が前年比2倍に成長し、グローバル戦略の軸足を日本と米国に置く方針を明確にした。また、メルカリは中国で得た教訓を生かし、新興国市場への進出には慎重な姿勢を見せている。
メルカリの山田進太郎CEOは「中国市場は非常に魅力的だが、参入障壁が高く、我々のリソースを分散させるよりも、コア市場で勝負する方が賢明だと判断した」と述べている。



