ベネチア国際映画祭で3冠を達成した映画『LOST LAND/ロストランド』が、ロヒンギャ民族に対する強制徴兵や「人間の盾」としての利用疑惑を描き、国際社会に衝撃を与えている。本作は、日本・フランス・マレーシア・ドイツの国際共同製作で、総製作費は1億円を超える。
映画の背景とテーマ
『LOST LAND』は、ミャンマーで迫害を受けるロヒンギャ民族の過酷な現実に焦点を当てている。監督の渡邉一孝氏は、これまでも難民問題をテーマにした作品を手掛けてきた。2014年冬に撮影された前作『僕の帰る場所』では、難民認定制度のほか、外国人の子どもの教育や母国への帰還と再適応を扱った。また、技能実習生として来日した女性たちが妊娠した場合、働き続けるために中絶を選ぶか帰国するかの選択を迫られる実態を描いた『海辺の彼女たち』も製作している。
渡邉監督は、運営していたミャンマー語のFacebookページに技能実習生からのヘルプメッセージが届いた経験を語る。「妊娠が分かって退職を余儀なくされた場合、次の職場が決まらなければ帰国するしかない。でも、何らかの事情で借金があり、オーバーステイしても捕まるまでは稼ぎ切ろうという人たちもいる。そういうやるせない実情を基に作ったのが『海辺の彼女たち』です」と述べている。
製作費1億円超の国際共同製作
『LOST LAND』の総製作費は1億円を超える。渡邉氏は、助成金と補助金、自己資金、支援者からの出資を組み合わせ、日本・フランス・マレーシア・ドイツの会社が出資する国際共同製作の形を取ったと説明する。助成金と補助金の獲得プロセスは複数のフェーズに分け、各段階で申請を重ねた。最初はVIPO(特定非営利活動法人映像産業振興機構)が運営する海外向け営業やティザー映像制作をサポートする企画開発支援の補助金を活用した。
「人とのつながりでここまできた」と渡邉氏は語り、多くの支援者の協力によって作品が完成したことを強調している。
ロヒンギャ民族の現実
映画では、ロヒンギャ民族が「世界で最も迫害されている民族」と呼ばれる背景が描かれる。特に、若者を強制的に徴兵し、「人間の盾」として利用する疑惑が映像化され、国際的な人権団体からも注目を集めている。ロヒンギャはミャンマー政府から公式に民族として認められず、2017年以降、大規模な弾圧により多くの難民がバングラデシュに逃れている。国連はこの弾圧を「ジェノサイド」と評価している。
映画はベネチア国際映画祭で最高賞を含む3冠を獲得し、国際的な評価を確立した。日本公開は2026年6月29日を予定しており、公開前から話題を呼んでいる。



