台湾を代表するモデル・俳優の林志玲(リン・チーリン)さんが、近年まで慈善事業や台湾文化の発信に積極的に関わる一方、2010年代半ばから一時的に活動の主軸を中国市場へ移していた時期があった。中国では映画やCM、大型バラエティ番組に出演したほか、中国中央テレビ(CCTV)の春節特番にも参加していた。
CCTV国慶節投稿で台湾社会に波紋
2023年10月1日、中国の国慶節(建国記念日)に合わせ、CCTVによる「新中国成立74周年」を祝うSNS投稿をリポスト。「我愛你中国」などのメッセージを添えたことが、台湾社会で大きな議論を呼んだ。この件を受け、林さんが台湾文化内容策進院(TAICCA)の董事に就任した際、一部の知識人や独立派団体から「台湾の文化政策や国家資源の方向性を担う立場として適切なのか」「台湾文化の代表性に混乱を招く」といった批判が噴出した。
中国市場で台湾芸能人にかかる圧力
中国市場で活動する台湾系芸能人を巡っては、中国当局や現地ネット世論による政治的・思想的圧力が存在すると以前から指摘されてきた。文化部長(日本の文科相に相当)の李遠氏や行政院側は、こうした中国礼賛型の投稿について「本人の純粋な政治的信念というより、中国で活動する芸能人に対する統一戦線的圧力の側面がある」と説明。さらに近年では、芸能人本人ではなく現地のSNS運営チームが半ば定型業務としてリポストを行っているケースも少なくないと指摘している。
日本人との結婚で中国ネットから非難
台湾内で批判を受けた林さんだが、過去には中国側から激しい批判を浴びたこともある。きっかけはEXILE AKIRAさんとの結婚だった。2019年の結婚発表当時、中国の民族主義的なネットユーザーから「なぜ日本人と結婚するのか」「抗日精神に反する」といった非難が相次いだ。また、中国在住の台湾出身タレント黄安氏からは「中国への忠誠が不十分だ」として「台湾独立派だ」とネット上で批判される騒ぎも起きていた。
台湾当局は擁護の姿勢
台湾の対中窓口機関である大陸委員会の副主任委員、梁文傑氏は「彼女は以前、黄安から『台独(台湾独立派)』と批判された人物だ。黄安と林志玲のどちらを支持するかと問われれば、多くの台湾人は林志玲を選ぶだろう」と発言し、擁護する姿勢を示していた。
台湾芸能人を悩ます「尺度」
林志玲の事例は、台湾芸能人が直面する「親台」か「親中」かという社会的踏み絵の典型例といえる。中国市場での活動を続けるには一定の政治的姿勢を示さざるを得ない一方、台湾内での評判を損なうリスクがある。このジレンマは多くの台湾出身芸能人に共通する課題であり、今後の台湾文化政策や芸能人の活動に影響を及ぼす可能性がある。



