ジャカルタ北部の港町ムアラ・バル。地元の女子中学生(13)は、ジャカルタ湾に臨む防潮堤に立つと、海面からわずかに出ている屋根を指さし、「『小さな津波』で沈んでしまった」と話す。地元の人たちが「沈むモスク」と呼ぶ建物だ。
「小さな津波」が住宅地をのみ込んだ
「小さな津波」とは、この街の住民たちの間で使われる言葉で、緩やかな海面の上昇を意味する。一帯はかつては住宅地だったが、2012年ごろから少しずつ沈み始めた。女子中学生が物心ついたころには、あたりはすっかり海に沈んでいたという。「ここが海でなかったころを思い出せない」と語る。
50年までに北部95%が水没との予測
バンドン工科大の研究者ヘリ・アンドレアス氏は、50年までにジャカルタ北部の95%が水没するという予測を国際学術誌上で15年に公表した。川崎市とほぼ同じ大きさの約147平方キロメートルが水没する計算だ。
沈む集落、自宅放棄する人々
沈む集落では、自宅を放棄する人々も出ている。庭に「魚」が住み着いた家もあるという。ジャカルタは東京を抜き、世界最大級の都市となったが、今、名実ともに沈み始めている。政府は首都移転を進めており、「限界都市」は岐路に立つ。



