東南アジアで電気自動車(EV)へのシフトが急速に進んでいる。これまでガソリン車で高いシェアを誇ってきた日本車メーカーは、EV分野で出遅れており、市場での地位が揺らぎ始めている。
タイでEV販売が前年比7倍に急増
タイでは2023年のEV販売台数が前年の約7倍となる7万6000台に達した。これは、政府のEV普及政策や中国メーカーの積極的な参入が背景にある。タイ政府は2030年までに新車販売の30%をEVにする目標を掲げており、購入補助金や輸入関税の引き下げなどでEV普及を後押ししている。
市場調査会社カウンターポイント・テクノロジー・マーケット・リサーチによると、2023年のタイ新車販売におけるEVの割合は約10%に上昇。この急成長の原動力となっているのが中国勢だ。比亜迪(BYD)や長城汽車、上汽集団傘下のMGなどが低価格なEVを投入し、シェアを拡大している。
日本車メーカーのシェア低下が顕著
一方、日本車メーカーはEVシフトで出遅れている。トヨタ自動車はタイで長年トップシェアを維持してきたが、2023年の販売シェアは33.9%と前年から低下。ホンダもシェアを落としている。日本車メーカーはハイブリッド車(HV)に強みを持つが、EVのラインアップが限られているため、急速に拡大するEV市場で存在感を示せていない。
タイ自動車工業会のデータによると、2023年のタイ新車販売台数は前年比8.7%減の77万5000台と減少した。これは、家計債務の増加や景気減速の影響を受けている。しかし、EV販売は急増しており、ガソリン車からEVへの移行が加速していることを示している。
中国勢が攻勢、日本車の競争力に陰り
中国勢はタイだけでなく、インドネシアやベトナムなど東南アジア全体で攻勢を強めている。BYDはタイに工場を建設中で、2024年から生産を開始する予定。長城汽車もタイ工場でEVを生産している。中国メーカーは低価格に加え、先進的な機能を搭載したEVを投入し、日本車の牙城を崩しつつある。
「日本車メーカーはEVへの投資が遅れ、競争力を失いつつある」と、バンコク在住の自動車アナリスト、タナポン・チャルーンシリポン氏は指摘する。「中国メーカーは政府の支援を受け、EVの生産コストを抑えている。日本車メーカーが巻き返すには、EVの開発と生産体制の強化が急務だ」
日本車メーカーの巻き返し策は
トヨタはタイでHVの販売を強化する一方、EVの投入も計画している。2024年にはタイでEVの生産を開始する予定で、2025年までにEVのラインアップを拡充するとしている。ホンダも2024年にタイでEVを発売する計画だ。しかし、中国勢の先行優位は大きく、巻き返しは容易ではない。
日本車メーカーは東南アジアで長年にわたり高いシェアを維持してきたが、EVシフトでその地位が脅かされている。タイでのEV販売急増は、東南アジア全体のEV市場拡大の象徴的な出来事であり、日本車メーカーにとっては警告となっている。



