EVシフト加速、中国メーカーが席巻する東南アジア市場の現実
EVシフト加速、中国メーカーが席巻する東南アジア市場 (11.07.2026)

東南アジアの自動車市場で、電気自動車(EV)の販売が急速に拡大している。2023年、タイでのEV販売台数は前年比で約8倍に急増し、中国メーカーが市場の7割以上を占めるに至った。日系自動車メーカーは長年この地域で支配的な地位を築いてきたが、EVシフトで後れを取っている。

タイ市場での中国勢の躍進

タイは東南アジア最大の自動車生産・輸出拠点であり、EV普及の最前線でもある。2023年のタイにおけるEV販売台数は約7万6000台と、2022年の約1万台から大幅に増加した。このうち、中国のBYD(比亜迪)が約3万台を販売し、トップシェアを獲得。続いて中国の合衆新能源汽車(Neta)や長城汽車(GWM)がランクインし、上位5社中4社を中国メーカーが占めた。

タイ政府は2030年までに新車販売の30%をEVにする目標を掲げ、購入補助金や輸入関税の引き下げなど積極的な優遇策を打ち出している。これが中国メーカーの低価格EVの流入を後押しした。BYDの主力モデル「ATTO 3」はタイで約110万バーツ(約450万円)と、同クラスのガソリン車と競合する価格設定で人気を集めている。

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日系メーカーの苦戦と戦略転換

タイ市場で長年7割以上のシェアを誇ってきたトヨタ、ホンダ、日産などの日系メーカーは、EV分野で出遅れている。トヨタは2022年末にタイで初の量産EV「bZ4X」を発売したが、価格は約180万バーツと中国勢の倍近く、販売台数は伸び悩んでいる。ホンダは2024年にEV投入を予定するが、現地生産は未定だ。

日系メーカーの課題は価格競争力と生産体制にある。中国メーカーは自国で大規模生産したEVをタイに輸出し、低価格を実現している。一方、日系メーカーはタイにガソリン車中心のサプライチェーンを構築しており、EVへの切り替えには巨額の投資が必要となる。また、バッテリーの現地調達も難しく、コスト競争で劣勢に立たされている。

東南アジア全域への波及

EVシフトはタイだけでなく、インドネシアやマレーシアなど東南アジア全体に広がっている。インドネシアは世界最大のニッケル埋蔵量を誇り、EVバッテリー生産の拠点として中国企業の投資が活発化。現代自動車やヒュンダイなど韓国メーカーも進出するが、中国勢の存在感が増している。

マレーシアでは2023年のEV販売が前年比3倍に増加し、中国のNetaやBYDが上位に食い込んでいる。フィリピンやベトナムでもEV需要が高まり、中国メーカーが低価格モデルを投入。東南アジア全体で、2025年までにEV販売が新車販売の15%を超えるとの予測もある。

日系メーカーの生き残り策

日系メーカーは東南アジアでのEV戦略を強化し始めている。トヨタはタイで商用EVの生産を計画し、2025年までに現地生産を開始する方針。ホンダはインドネシアでEV生産を検討中。日産はタイでEV部品の現地調達を進め、コスト削減を狙う。

しかし、中国メーカーはすでに東南アジアでの生産拠点を構築し始めている。BYDはタイに年産15万台の工場を建設中で、2024年に稼働予定。長城汽車もタイ工場でEV生産を開始した。日系メーカーが巻き返すには、価格競争力と充電インフラ整備が急務となる。

専門家は「東南アジアのEV市場は今後5年で大きく変わる。日系メーカーが伝統の技術力を生かし、ハイブリッド車からEVへの移行を加速できるかが鍵」と指摘する。タイ政府のEV推進政策も、日系メーカーにとっては脅威であり機会でもある。

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