震災の記憶がウクライナと重なる
阪神大震災で被災し、ボランティア活動に取り組んだ経験を持つ神戸市灘区の画家磯野和美さん(63)が、ロシアによるウクライナ侵略で傷ついた人々への支援を続けている。あの日見た神戸の光景と、破壊されたウクライナの街並みが重なったという。
「命が理不尽に奪われる戦争がいまだ続いている。震災と同様に支援に取り組み続けたい」と磯野さんは語る。
被災体験から始まったボランティア
磯野さんは1995年1月17日、自宅で就寝中に大きな揺れに襲われた。自宅や家族に大きな被害はなかったが、周囲では家屋が倒壊し、救助を求める人々であふれていた。近所の人とがれきの中から助け出した人もいた一方、火の手が迫り、返事が聞こえていたにもかかわらず救えなかった人もいた。
多くの人が最愛の人を失い、心身を疲弊させる中で、少しでも心を癒やせればと、絵画教室を主宰する磯野さんは、避難所の小学校などで子どもたちが遊べるおもちゃ作りのボランティアに取り組んだ。
侵略開始から支援の決意
あれから27年後の2022年2月、ロシアによる侵略が始まった時、荒廃した街の姿が神戸に重なった。磯野さんは侵略前から、日本で通訳として働くウクライナ人女性と知り合い、ウクライナを訪ねた経験があった。現地の友人からSNSで送られる写真や動画には、破壊された家やマンションに突き刺さるミサイルの姿があった。
「自分にも何かできないだろうか」と考え、保存食や栄養剤、衣類などを送り始めた。
支援の輪が広がる
その後も避難者やウクライナにいる知人から聞く話は悲惨なものばかりだった。「知ったからこそやめるわけにはいかない」と磯野さんは語る。絵画教室の生徒や保護者も協力し、貯金していた小銭を持ってきて「これで足りるかな」と話す児童の姿に、思いを強くした。
「自分たちだけ安全な場所にいることが後ろめたい」という避難者の言葉を受け、ウクライナの人々が手作りした編み物などを販売し、物資購入に充てる企画も始めた。磯野さんと交流のある避難者、ナタリヤ・デレビャンコさん(48)は「ウクライナの子どもたちのために支援を続けていることに心から感謝している」と話す。
現地での支援活動
現地では友人ら約20人が、行政などの支援が届きにくい地域に物資を運んでいる。昨冬には、児童養護施設があるロシアとの国境沿いの村に発電機を届けた。
戦闘が激しくなったというニュースを耳にするたび、協力してくれる友人が前線に行くのではと心配が絶えない。「『ウクライナはもう普通になったんだよね』という人もいるが、現実には今も空襲が起き、戦争は続いている」と磯野さんは強調する。
復興への長い道のり
「仮に戦争が終わっても、阪神大震災のように復興にも時間がかかる。戦争が終わっても支援を続けたい」と磯野さんは力を込めた。



