「オルカン一択」のウソ?本当に必要な資産分散とは
「若い皆さんはオルカン一択ですよ」という言葉を耳にしたことがあるだろう。オルカンとは「全世界株式インデックスファンド」の愛称で、低コストで分散投資ができるとして人気だ。しかし、証券ジャーナリストの前田昌孝氏は、著書『あぶないオルカン』(宝島社新書)の中で、資産分散は金融資産の種類を増やすだけでは不十分だと警鐘を鳴らす。
夫婦の個人年金で起きたトラブル事例
前田氏によると、ある夫婦がそれぞれ個人年金保険に加入していたケースで、夫の契約先の生命保険会社からは「受給を5年遅らせると、毎年の支払額が2割余り増える」と案内があった。ところが、妻が自分の契約先に同じように「受給を遅らせて受取額を増やしたい」と伝えたところ、営業担当者から「なんでそんなことを知っているのか」と嫌味を言われ、しぶしぶ対応されたという。このような経験から、前田氏は取引金融機関の分散もリスク分散の一手だと指摘する。
日本の預金保険は先進国で最低レベル
日本の預金保険制度による保証額は、1人1金融機関当たり元本1000万円と破綻日までの利息に限られる。これは米国(連邦預金保険公社FDICにより1口座当たり25万ドル、約4000万円まで保護)やEU(欧州連合指令により加盟国一律で10万ユーロ、約1860万円まで保護)と比べて見劣りする。若年層には1000万円は多額に思えるかもしれないが、資産形成に成功すれば退職時には十分に上回る額になる。オンライン取引が一般的な現在、ネット銀行も含めて複数の銀行に口座を持ち、日ごろから操作に慣れておくと、何かあった時に慌てずに済む。
証券会社の分散も検討すべき
証券会社に関しては、NISA口座は1人1金融機関だけなので、1社しか口座を持たない人が多い。投資信託や外国株は証券会社によって取扱商品がやや異なるが、国内株はどこで買っても基本的に同じ。ただし、単元未満株の売買はサービス内容が異なり、国内外の既発債券は取り扱い銘柄も取引条件も証券会社によって異なる。顧客の資産を大切にしてくれることが大前提だが、ニーズに応じて複数の証券会社に口座を持つことも検討すべきだ。
資産分散の10の切り口
前田氏は、家計の資産分散を考える際に押さえておくべき10の切り口を提示している。具体的には、①金融資産の種類(預金、債券、株式、投資信託など)、②通貨(円、ドル、ユーロなど)、③地域(日本、米国、新興国など)、④業種、⑤運用スタイル(アクティブ、パッシブ)、⑥時間(長期・短期)、⑦税金(NISA、iDeCoなどの非課税枠活用)、⑧取引金融機関(銀行、証券会社、保険会社)、⑨相続や贈与の観点、⑩リスク許容度とライフプラン、の10点だ。これらをバランスよく考慮することで、真の資産分散が実現できる。
まとめ
「オルカン一択」は手軽で魅力的な選択肢だが、それだけで全てをカバーできるわけではない。預金保険の限界や金融機関ごとのサービス差を理解し、複数の金融機関との取引を活用することで、より堅固な資産形成が可能になる。若いうちから少しずつでも分散の視点を取り入れ、長期的な視点で資産を育てていきたい。



