2024年のマイナス金利政策解除以降、預金金利や国債利回りが上昇し、株価も高騰している。「運用しないと損をする」という雰囲気が広がる中、退職金を手にした人々が銀行からの積極的な営業に直面している。ファイナンシャルプランナーの藤川太氏は、こうした状況で多くの人が誤った選択をし、後悔するケースが後を絶たないと警鐘を鳴らす。
退職金を狙う銀行の戦略
退職金が口座に振り込まれると、メインバンクから電話がかかってくることがある。個人情報保護法やファイアーウォール規制で目的外利用は禁じられているが、入金をきっかけに営業を受ける事例が報告されている。藤川氏によれば、銀行は「退職金定期預金」として年利2%などの高金利を提示するが、適用期間は3カ月程度と短く、その後は通常の定期預金金利に戻る。この商品は「まき餌」であり、本命は高金利期間終了後に手数料の高い投資信託や保険へ誘導し、銀行が収益を確保することにあるという。
外貨建て保険の落とし穴
藤川氏の相談事例で最も多いのが、銀行から外貨建て保険を勧められて加入するパターンだ。退職金の運用相談で銀行を訪れると、通常の窓口ではなく特別なスペースに案内され、丁寧な対応を受ける。担当者は「まとまったお金を寝かせておくのはもったいない」と切り出し、外貨建て一時払い保険を推奨する。多くの人はまとまった資産の運用経験がなく、「銀行だから間違いない」という信頼感から契約してしまう。しかし、外貨建て保険は為替リスクや高額な手数料が伴い、元本割れのリスクも高い。藤川氏は「大きなお金を持ち慣れていない人が、急に判断を迫られる構造が後悔の温床になっている」と指摘する。
実例に学ぶ失敗のパターン
記事では5つの実例を通じて、退職金運用の失敗パターンを紹介している。例えば、銀行の勧めで外貨建て保険に加入したケースでは、為替変動で想定以上の損失を被った。また、退職金を元手に個別株投資に手を出したケースでは、知識不足から高値掴みし、大きな損害を出した。さらに、退職金で住宅ローンを一括完済したケースでは、手元資金が不足し、生活費に窮する事態に陥った。藤川氏は「退職金は老後の生活を支える大切な資金。焦って運用する必要はなく、まずはしっかりと計画を立てることが重要」と助言する。
金利上昇の恩恵を受けるには
金利上昇局面では、預金や国債など低リスクの運用でも一定の利回りが期待できる。藤川氏は、退職金の一部を定期預金や個人向け国債に充てることを提案する。一方で、投資信託や保険を検討する場合も、手数料やリスクを十分に理解した上で、分散投資を心がけるべきだという。銀行の営業に流されず、中立なアドバイザーに相談することも有効な手段としている。
本記事は『プレジデント』2026年7月17日号の特集「金利上昇で得する人、沈む人」の一部であり、全文は有料会員限定で公開されている。



