生成AI(人工知能)から最高の答えを引き出すには、優れた「問いを設計する技術」が不可欠だ。データサイエンティストの中村一也氏は、この技術が個人の生産性や判断力を大きく左右すると指摘する。同氏の著書『すぐ決められる人がうまくいく』(明日香出版社)から、その秘訣を紹介する。
ネット検索と生成AIの決定的な違い
何かを知りたいときに質問を投げかけて答えを得るという点では、生成AIとネット検索は似ている。しかし、その根底にある思想と提供される情報の質は全くの別物だ。
従来のインターネット検索は「情報のありかを示す地図」のようなもの。キーワードを投げかけると、検索エンジンはそのキーワードが含まれる可能性が高いウェブサイトのリストを提示する。しかし、それらの情報の多くは不特定多数の読者に向けて書かれた画一的なもので、本当に必要な情報を見つけ出し、理解し、目的に合わせて編集する作業は人間に委ねられていた。
一方、生成AIは質問の意図や背景を汲み取り、「あなたのためだけ」に情報を提供する。これこそが「パーソナライゼーション(個々人に合った最適化)」と呼ばれる生成AIの利点だ。
具体的な活用例:Excel関数の習得
中村氏は自身の経験を例に挙げる。以前、Excelの関数がわからないとき、ウェブサイトで使い方を学び、悪戦苦闘しながら自分の状況に合わせて利用していた。しかし、生成AIならば、自分のデータや目的に合わせた具体的な関数の使い方を、対話的に教えてくれる。この違いは大きい。
一流のプロンプト技術
中村氏によれば、優れたプロンプト(AIへの指示)にはいくつかの基本要素がある。具体的には、役割の指定(例:「あなたはプロのデータサイエンティストです」)、目的の明確化、出力形式の指定(例:「箇条書きで」)、制約条件の提示(例:「300文字以内で」)などだ。
また、Googleの研究では、指示に「ステップバイステップで考えてください」と加えるだけで、AIの正答率が大幅に向上することが判明している。こうしたテクニックを駆使できるかどうかが、仕事ができる人と三流の分かれ道になる。
「質問力」が生産性を左右する時代
中村氏は「AIから最高の答えを引き出すための『問いを設計する技術』は、これからの時代の個人の生産性を、ひいては判断力を大きく左右する」と強調する。単に「大統領は誰ですか」と聞くのではなく、自分の目的に合わせた質問ができるかどうか。その差が、成果の差となって現れる。
生成AIの普及により、情報を得ること自体は容易になった。しかし、その情報を最大限に活用するには、適切な質問を投げかける能力が求められる。まさに「質問を見れば一発でわかる」仕事ができる人と三流の違いが、ここにある。



