リニア中央新幹線の静岡工区が着工した。この区間はわずか8.9キロと短いが、南アルプスの下を通る全長25キロのトンネルの中央部にあたり、「前例のない最難関工事」とされる。トンネルの深さはスカイツリー(634メートル)2本分以上に相当する約1400メートルに達する。
南アルプスの地下に広がる巨大トンネル
2026年6月10日、朝日新聞社のヘリコプター「あすか」で静岡と山梨、長野の県境付近を飛行すると、雲の切れ間から雪が残る険しい尾根が見えた。標高3000メートル級の山々が連なる南アルプスの麓では、大井川の上流部が陽光に輝いていた。三日月形の田代ダムが深緑色の水をたたえる光景が広がる。
この地域が、リニア中央新幹線(品川―名古屋間286キロ)のうち、最後まで工事が始まっていなかった静岡工区に該当する。JR東海の関係者は「ここからが本当の山場だ」と語る。
2種類のトンネルと先進坑の役割
南アルプスでは主に2種類のトンネルが掘られる。一つはリニアが通る「本坑」(幅約13メートル、高さ約8メートル)。もう一つは、本坑を掘る前に地質などを調査するための「先進坑」と呼ばれる小断面トンネルで、本坑と並行し、将来的には避難や保守作業の通路となる。
さらに、工事用車両や資材を通すための導線トンネルも数本建設される。これらのトンネル群は、南アルプスの厳しい地質条件と高水圧に対応するため、高度な技術が要求される。
工事の進捗が開業時期を左右
静岡工区の工事の進み具合が、リニア中央新幹線の開業時期を決める鍵となる。JR東海はこれまで、トンネル掘削に伴う大井川の流量減少など環境影響への懸念から、静岡県との調整に時間を要した。2026年7月に静岡県知事が着工を容認し、工事が本格化する。
このトンネルは「前例のない最難関工事」とされ、山の重みによる岩盤圧力や湧水対策が課題となる。土木用語で「山の重み」と呼ばれる現象に対処するため、先進坑での地質調査が重要視されている。



