2026年5月にプレジデントオンラインで大きな反響を呼んだ人気記事ベスト3をお届けする。ライフ部門第3位は、独立研究者・著述家の山口周氏による「そりゃ『キレる老人』が大量に生まれるわ…テクノロジーの進化が中高年から奪った大事なモノ」である。
年長者の価値が低下する時代
インターネット登場以降の人口動態的コンテキストは、「年長者の社会における相対的な価値の減少」として表現できる。その理由は明確で、「テクノロジーの進化」というマクロコンテキストの影響だ。かつては人間が長年かけて蓄積するしかなかった技能や知性を、テクノロジーが代替するようになり、組織や社会、コミュニティにおける年長者・高齢者の価値が曖昧になっている。
例えば、野球の世界でこの20年間に起きた変化は典型的だ。ブラッド・ピット主演の映画にもなった『マネー・ボール』では、全米大学野球の膨大な試合データがネット上でアクセス可能になり、コンピューター解析によって、経験を積んだスカウトの眼力や監督の直感よりも、統計データとアルゴリズムに頼った方が低コストで効果的なチーム編成が可能になったことが描かれている。データとコンピューターが、古参の経験豊富なスカウトを時代遅れの遺物に変えたのだ。
この変化は野球に限らない。ワインのテイスティング、レントゲン画像の診断、法的事案の判断など、長年の経験を積んだエキスパートの能力をAIが凌駕するケースが現れている。
新しい技術への適応力が重要に
多様な分野でデータが可視化され、成果や効果を示す指標との統計的相関が明らかになるにつれ、かつては豊富な経験を持つ専門家にしかできなかった判断や評価が、低コストで容易に行えるようになってきた。これまで年長者が優位を保てたのは、長い時間をかけて蓄積した経験・知識・スキルといった人的資本に希少性があり、さらにそうした人々が徒党を組んで社会関係資本を独占的に保有していたからだ。
しかし現代では、多くの知識やノウハウがデジタル化され、若者でも短期間でアクセスできる。変化のスピードが速い領域では、経験の長さよりも、新しいテクノロジーへの適応力、アップデートへの対応力、アンラーン(一度学習したことを棄却する)の能力がより重視されるようになった。
GAFAM創業者の平均年齢は23歳
GAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft)の創業者の創業時点での平均年齢は23歳だ。これは、テクノロジーが激しく進歩する現代社会において、若年層が優位性を持つことを示している。長く経験を積んだ人ほど優秀という価値観は崩れている。
日本における23歳の価値は、かつてとは大きく異なる。経験年数が「デキる人」の指標だった時代は過ぎ去り、今や新しい技術への適応力こそが重要視される。この変化は、中高年の社会での立場を脅かしている。
なぜ「キレる老人」が増えているのか
価値の下がった高齢者をどう扱うかが社会問題となっている。山口周氏は、テクノロジーの進化が中高年から「経験の価値」を奪い、相対的な地位低下を招いたことが、「キレる老人」増加の背景にあると指摘する。かつては尊重された年長者の知恵や経験が、今では軽視され、フラストレーションがたまる一方だ。
本稿は、山口周著『コンテキスト・リーダーシップ』(光文社新書)の一部を再編集したものである。



