追手門学院大学客員教授の西田浩史氏が、大学教員の「選別ロジック」を解き明かす連載の第13回。今回は、今年4月に教授へ昇進した桜美林大学芸術文化学群教授の林秀紀氏を取り上げる。林氏は三菱電機とサムスン電子で25年にわたりプロダクトデザイナーとして活躍し、「日韓逆転」の現場を目撃した人物だ。現在は木育玩具や高齢者向け玩具の研究者として注目されている。
三菱電機、サムスン電子でのキャリア
林氏は1990年に大学を卒業後、三菱電機デザイン研究所に入社。当初は家電製品のデザインを手がけ、その後携帯電話など情報通信機器のデザインを担当した。NTTドコモの「iモード」全盛期、日本メーカーが世界市場で存在感を示していた時代である。1993年にルームバー(インテリア冷温庫)のデザインでグッドデザイン賞を初受賞し、その後携帯電話で連続受賞。2005年には世界3大デザイン賞の1つであるドイツのiFデザイン賞を「MITSUBISHI M800」で受賞し、国際的な評価を得た。
日韓逆転の現場
林氏は三菱電機を経て、サムスン電子でも活躍。その過程で、日本メーカーが世界市場でリードしていた状況が、韓国メーカーに逆転される瞬間を目の当たりにした。この経験が、後の研究者への転身に影響を与えたとみられる。
アカデミックシフト:ゼロからの研究テーマ探し
40代後半で研究者の道を選んだ林氏は、最初に「何を研究するか」という問いに直面。企業での実績をすべてリセットし、ゼロから研究テーマを見つける必要があった。東京おもちゃ美術館での出会いが転機となり、木育玩具や高齢者向け玩具の研究に着手。現在は桜美林大学で教授として教鞭をとり、これらの分野で注目を集めている。
長期活躍する大学教員の条件
前回の連載では、産業能率大学経営学部教授の松尾尚氏への取材を通じて、長く活躍する大学教員の4つの条件が探られた。林氏のケースも、その条件に当てはまる部分が多い。林氏は企業での実績を活かしつつ、新たな研究領域を開拓することで、教授への昇進を果たした。
林氏の転身は、社会人から大学教授を目指す人々にとって一つのモデルケースとなる。大企業での経験をリセットし、新しい分野で挑戦する姿勢が評価されたといえる。



