内装の違いが満足度を左右する理由
クルマを購入する際、多くの人はボディカラーやホイールデザインに注目しがちだが、実際に長時間過ごすのは車内である。ドアを開け、シートに腰を下ろし、ステアリングを握る動作は毎日繰り返されるため、インテリアの質感は長期所有の満足度に直結する。新型日産キックスでは、グレード「X」と「G」で内装に明確な差が設けられており、価格差約64万円(X:325.93万円、G:389.84万円、2WD同士の比較)に見合う価値があるかどうかが焦点となる。
シート素材の違いがもたらす印象の変化
まず目を引くのはシートだ。「X」は織物とトリコットを組み合わせたシート表皮を採用し、エンボス加工によるグラフィックが目立つ。一方「G」は合成皮革を用い、見た目にも上質な雰囲気を醸し出す。シートは車内で最も面積が大きいパーツの一つであり、素材が変わるだけでインテリア全体の印象が一変する。腕時計で例えるなら、ステンレスブレスレットから本革ストラップに替えたような感覚で、性能は同じでも身に着けたときの気分が大きく変わる。
ゴールド加飾が演出する上質感
内装で意外に効果的なのが各部の加飾だ。「X」ではインストルメントパネルに織物素材、メタル調フィニッシャーはシルバー。対して「G」ではインストルメントパネルにプレミアムファブリックを採用し、メタル調フィニッシャーはゴールドとなる。さらにドアトリムやドアアームレストもプレミアムファブリックとなり、ゴールド/グレーのステッチが施される。このゴールドは派手ではなく、落ち着いた色味でアクセントとして上質感を引き立てる。最近のプレミアムSUVでは金属調パーツを多用するよりも素材の組み合わせで高級感を演出する傾向があり、新型キックスGもその考え方に沿っている。
パワーシート:なくても困らないが、あると便利
Gだけに与えられる運転席パワーシートは、「なくても困らない」と思われがちだが、夫婦や家族でクルマを共用する家庭ではその価値が変わる。運転者が替わるたびにシートを細かく調整する必要があるため、電動でスムーズに調整できるパワーシートは毎日の小さなストレスを減らしてくれる。長く付き合うほどありがたみを感じる装備だ。
毎日触れる場所にこそ価値がある
多くのオーナーは毎日駐車場へ向かい、ドアを開け、運転席に座る。つまり、毎日必ず触れるのがシート、ステアリング、ドアトリムだ。Gは移動性能を高めるためではなく、毎日の体験を少し豊かにするためのグレードといえる。これはカタログの装備表だけでは伝わりにくい魅力である。
内装重視ならGは価格差以上の価値
Xの内装が安っぽいわけではなく、この価格帯のSUVとしては十分に質感が高く、日常使いで不満を感じることは少ない。一方Gは、質感という数字では表せない価値を積み重ねている。プレミアムファブリック、ゴールド加飾、合成皮革シート、パワーシート、電動パノラミックガラスルーフ――いずれも走行性能を変える装備ではないが、それらが積み重なることでドアを開けた瞬間の空気感が確かに変わる。毎日乗るクルマだからこそ、その違いは数年後にも満足感として残る。内装だけで選ぶなら、Gは価格差以上の価値を持ったグレードといえるだろう。
編集部のひと言
腕時計好きなら、「ムーブメントは同じでも、ケースの仕上げや文字盤の質感で欲しさが変わる」という感覚に共感いただけるだろう。新型キックスのXとGもそれに似ている。性能の差ではなく、毎日目にする部分の仕立てが所有する満足感を左右する。販売店ではぜひ運転席に座り、ドアトリムやインパネの素材感まで見比べてみることをおすすめする。



