EVシフト加速でガソリン車部品メーカーが迫られる変革の時
EVシフトでガソリン車部品メーカーに変革迫る

世界的なEV(電気自動車)シフトの加速に伴い、ガソリン車向け部品を主力としてきた自動車部品メーカーは、かつてない変革を迫られている。特にトヨタ自動車のサプライチェーンに深く組み込まれてきた部品メーカーは、エンジンや燃料噴射装置など内燃機関関連の部品需要が長期的に減少する中で、新たな事業の柱を模索している。

エンジン部品需要の減少と代替技術へのシフト

日本を代表する部品メーカーの一つであるデンソーは、2035年までにエンジン関連部品の生産を半減させる方針を打ち出している。同社は電動化対応部品や先進運転支援システム(ADAS)向けセンサーなどにリソースを振り向け、事業構造の転換を急ぐ。また、トヨタ系の部品メーカーであるアイシンも、トランスミッションやエンジン部品から、EV向けのeアクスル(駆動ユニット)や熱マネジメントシステムへのシフトを加速している。

一方で、トヨタ自動車自体はEVだけでなく、ハイブリッド車(HV)やプラグインハイブリッド車(PHV)、さらには水素エンジン車などマルチパスウェイ戦略を掲げており、これが部品メーカーにも影響を与えている。水素エンジンは燃焼技術の応用が可能なため、既存のエンジン部品メーカーにとっては技術を活かせる分野だ。トヨタは水素エンジン車の市販化を視野に入れており、関連部品の需要創出が期待される。

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中小部品メーカーの苦境と生き残り戦略

大手部品メーカーと異なり、中小のガソリン車部品メーカーは資金力や技術力の面で厳しい状況に立たされている。愛知県に本社を置くあるエンジン部品メーカーは「EVシフトの波が来ることは分かっていても、設備投資の回収ができていない状態で新規事業に踏み切るのは難しい」と打ち明ける。同社は現在もガソリン車向け部品が売上高の8割を占めており、EV向け部品の受注獲得に苦戦している。

こうした状況に対し、経済産業省は自動車部品サプライヤーの事業転換を支援する補助金制度を設けている。2023年度補正予算では、中小サプライヤーの電動化対応設備投資などに対して最大10億円を支援する事業が組まれた。しかし、申請手続きの煩雑さや、実際の需要見通しの不透明さから、活用が進んでいないケースも多い。

雇用維持と技術継承の課題

ガソリン車部品の生産縮小は雇用にも影響を及ぼす。部品メーカーの多くは熟練技能者による高度な加工技術や組立技術に依存しており、これらの技術をEV向け部品生産にどう転用するかが課題だ。トヨタ系部品メーカーであるジェイテクトは、社内で内燃機関部品からEV部品への技能転換プログラムを実施しており、従業員の再教育に力を入れている。

ある業界団体の幹部は「ガソリン車部品の需要が完全にゼロになるわけではないが、減少は避けられない。部品メーカーは、生き残るために自社の強みを再定義し、電動化や自動運転などの成長分野にどう結びつけるかが問われている」と指摘する。

海外市場との競争と日本の強み

EVシフトは中国や欧米の部品メーカーにも大きなビジネスチャンスをもたらしている。中国の部品メーカーは政府の強力な支援のもと、EV向け部品の生産能力を急速に拡大しており、日本の部品メーカーは価格競争で劣勢に立たされる懸念がある。一方、日本の部品メーカーは高い品質と信頼性、そして長年の取引関係で築いた顧客基盤が強みだ。トヨタ系部品メーカーは、トヨタのマルチパスウェイ戦略に沿って、HVや水素エンジン向け部品で差別化を図る戦略をとっている。

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また、部品メーカー各社はM&Aや提携を通じて技術や市場を獲得する動きも活発化している。デンソーは2023年に米国の半導体メーカーと提携し、EV向けパワー半導体の開発を強化した。アイシンも独部品メーカーと協業し、EV向け駆動ユニットの効率向上を目指している。

ガソリン車部品メーカーの変革は、日本の製造業全体の競争力にも直結する問題だ。政府の支援策や業界の連携を通じて、いかにスムーズに事業転換を進め、雇用と技術を維持していくかが今後の焦点となる。