ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の入場ゲートをくぐると、正面にそびえる巨大な地球儀「ユニバーサル・グローブ」。多くの来場者が記念撮影をするこのオブジェには、ある秘密が隠されている。テーマパークコンサルタントの清水群氏によれば、この地球儀は本来の自転とは逆方向に回転しており、その回転によって「UNIVERSAL」の文字が頭文字の「U」から順に現れるよう設計されているという。この仕掛けにより、写真撮影のタイミングが取りやすくなり、来場者は思わず次の人にもその秘密を伝えたくなる——これこそが「沼るファン」を生む種だと清水氏は指摘する。
ディズニーランドに見る緻密なファン体験設計
清水氏は、著書『1割の顧客で9割売り上げる「沼るファン」のつくり方』(かんき出版)の中で、テーマパークがどのようにして熱狂的なファンを生み出すかを解説している。ディズニーランドでは、ゴミ箱が8メートル以内の間隔で設置されており、ポイ捨てを防ぎながらもパーク内がゴミ箱だらけにならないよう計算されている。また、水飲み器は2台並び、高さが異なることで大人用と子ども用に分けられ、向かい合わせに配置されることで親が子どもを見守りながら水分補給できるように配慮されている。これらは家族の絆を大切にするディズニーの哲学を体現した設計だ。
USJの空間演出と地球儀の逆回転
USJでは、入場ゲートから続く道が奥に向かってわずかに狭くなっており、遠近感を強調することでパークをより広大に見せている。この細かな変更が来場者のワクワク感を増幅させる。そして最大の仕掛けがユニバーサル・グローブの逆回転だ。地球の自転とは逆に回転させることで、「UNIVERSAL」のロゴが「U」から順に視認できるようになり、写真撮影のタイミングを合わせやすくなる。多くの人が気づかないこの秘密こそが、気づいたときに感動を共有したくなる「沼の種」となる。
「沼るファン」を生む方法:サブ価値に愛を隠す
清水氏は、ファンを熱中させる鍵は「サブ価値」にあると説く。メインの価値(アトラクションやキャラクター)は当然のものとして提供し、その上で細かな仕掛けや気配りといったサブ価値に愛を込めることで、消費者の期待値を上回り、熱狂的なファンを生み出すことができる。USJの地球儀の逆回転やディズニーのゴミ箱の間隔は、まさにこのサブ価値の好例だ。これらの仕掛けは一見些細だが、気づいた人にとっては大きな発見となり、自然と口コミを生む。
消費者期待値を上回る意外な方法
清水氏は、消費者が「当たり前」と思っているメイン価値に加えて、予想外のサブ価値を提供することで、簡単に期待値を上回ることができると指摘する。例えば、USJの入り口の道幅の微妙な変化や水飲み器の高さの違いは、多くの人が意識しないレベルで設計されている。しかし、その積み重ねが来場者の体験を豊かにし、結果として「沼るファン」を生み出す。清水氏は「愛はおまけであるサブ価値に隠す」と述べ、ビジネスにおいても同様のアプローチが有効だとしている。
まとめ:最速で沼るファンを生む秘訣
テーマパークの仕掛けに学ぶ「沼るファン」のつくり方は、メイン価値の充実はもちろん、細部へのこだわりとサプライズを仕込むことにある。USJの逆回転する地球儀は、その象徴的な例だ。清水氏は、このような「沼の種」を意図的に配置することで、顧客を熱狂的なファンに変え、売上の9割を1割の顧客から得ることも可能になると説く。ビジネスパーソンにとって、テーマパークの設計思想は、顧客ロイヤルティを高めるための貴重なヒントに満ちている。



