多くの企業が緻密なペルソナを設定しても、なぜ商品は売れないのか。その答えは、数字に表れない「生きた感情」を想像できていないからだ。アグリエール代表取締役の浅野恭弘氏は、ヒット商品を生む人々が共通して行っているのは、たった一人のリアルな生活を観察することだと指摘する。
売上を伸ばす3つの選択肢
ブランドは「誰に届けるのか」を明確に決める必要がある。狙う相手が定まれば、商品の見せ方や伝える言葉が自然と見えてくる。売上を伸ばす上で有効なのが「売上の分解」という考え方だ。売上は次の3つの要素のかけ算で構成される。
売上=客数×購入単価×購入頻度
この3つのうちどれを伸ばすかによって、狙うべきターゲットやアプローチ方法が大きく変わる。スーパーマーケットを例に、それぞれの戦略を見ていこう。
①客数を増やす(新しい出会いをつくる)
客数とは、1日に購入してくれる人の数だ。売上を伸ばす局面では「新たに買ってくれる人(新規顧客)」をどれだけ増やせるかがカギとなる。しかし、世の中のすべての人に知ってもらおうとすると、広告費はいくらあっても足りない。限られた予算で成果を出すには、「自分たちの商品を最も必要としている人」に絞り込んでアプローチすることが重要だ。
②購入単価を増やす(満足の深さを変える)
購入単価とは、1人の客が1回の来店で支払う金額だ。例えば、お肉売り場に「今日はカレーにしませんか?」というポップがあったとする。それを見て、献立をまだ決めていなかったのに、野菜やルウまでつい買ってしまった経験はないだろうか。ターゲットが一人暮らしの学生なのか、子育て中の主婦なのかによって、「つい買いたくなるもの」や訴求力のある言葉は変わる。相手の生活を思い描くほど、自然なついで買いを生む提案ができるようになる。
ターゲットはどうやって決める?
続いて、購入頻度を増やす方法について考えよう。購入頻度とは、同じ客がどれだけの期間で再び購入するかを示す。リピート率を高めるには、商品自体の満足度はもちろん、購入後の体験やフォローが重要だ。例えば、生鮮食品なら鮮度や味わい、日用品なら使い勝手やコストパフォーマンスが再購入の決め手となる。
浅野氏は、その需要に応えるため、キレのある味わいに仕上げ、気付けの一杯を意味する「ショット」というネーミングを冠した商品を発売した事例を紹介している。数字に表れない「生きた感情」を想像できたとき、ブランドや商品はまるでその人のために書かれたメッセージのように響く。まずは身近な人の生活を想像することから始めてみよう。
ペルソナを作り込むよりも、実際の一人の生活を深く観察し、その感情に寄り添うことが、結果的に多くの共感を生み、売上につながるのだ。



