シャープ株主総会、無配を陳謝し鴻海との協業強化で再成長へ
シャープ株主総会、無配陳謝し鴻海協業強化へ

シャープは2026年6月24日午前10時から、大阪府立国際会議場(グランキューブ大阪)で第132期定時株主総会を開催。194人の株主が参加し、2026年4月に社長CEOに就任した河村哲治氏が議長を務めた。

河村社長、無配を陳謝し再成長への決意

河村社長は冒頭、2025年度を振り返り「収益力が大きく改善し、財務体質や信用力の改善も進み、成長の基盤となるブランド事業への投資や従業員エンゲージメントスコアが向上するなど、再成長の土台づくりが着実に進展した」と総括。一方で「シャープ単体での繰越利益剰余金が欠損の状況であるため、遺憾だが無配とさせてもらった。上場会社の社長としての責任を果たせていないことであり、忸怩たる思いがある。株主には誠に申し訳なく深くお詫びを申し上げる」と陳謝した。

その上で「私が社長として果たすべき役割は、鴻海のリソースをどん欲に活用し、新規事業の早期具体化とSHARPブランドのグローバル拡大により再成長を実現すること。積極的に発信することで企業価値を最大化し、ステークホルダーから期待してもらえる企業へと成長することである」と述べた。

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AIを軸とした新たな価値創造

河村社長は「『暮らす』と『働く』のあらゆるシーンにAIをかけあわせて、人の未来を拓くことを目指す。顧客接点となるスマートライフ、スマートワークプレイスと、最先端デバイスを生み出すディスプレイデバイスの3事業を中心に、AIのかけあわせで新たな価値を創造する。AIインフラ、次世代通信で新事業を展開し、AIでの価値創造を支える社会基盤の構築にも取り組む」と方向性を示した。

2026年度については「厳しい事業環境のなかでも営業増益を目指す。既存事業の強化と事業変革を強力に推進し、成長を牽引する新規事業の立ち上げを加速する」と自信を見せた。

鴻海との関係悪化懸念に反論

株主からは親会社・鴻海との関係悪化を懸念する声が上がった。亀山第2工場の売却が不成立になったことなどが背景にある。河村社長は「鴻海の劉揚偉董事長(シャープ会長兼務)からは、新経営陣に対し『全力でサポートする』『なんでも言ってほしい』との言葉をもらっている。従来は生産委託の協業が中心だったが、鴻海はスマホ生産受託に留まらず、AIサーバー生産受託で世界トップになるなど短期間で業容を変革。シャープが新規事業に取り組む上で、これらのリソースをどん欲に利用する必要がある」と説明。

「社長就任以来、台湾に2度足を運び、鴻海の新規事業への取り組みや、シャープの新規事業に生かせるリソースを検証してきた。劉董事長からも、鴻海社内にシャープと手を組むよう指示が出ている。この関係は一方的ではいけない。シャープという重たい荷物を担ってもらうだけではいけない。それぞれが提供できる価値を確認した上で関係を続ける」と述べた。

さらに「亀山第2工場の売却不成立は、鴻海にとって利益につながるかどうか検討した上での結論。親会社なのに買収してくれなかったという一方的な考え方はいけない。今後の協業でWin-Winの関係を構築できる。鴻海からのサポートについては確信を持っている」と語った。

鴻海との戦略的協業覚書を発表

シャープは株主総会終了後、鴻海と「新規事業における戦略的協業に関する覚書」を締結したと発表。「AIインフラ・ソリューション」「エネルギー・ESG関連アプリケーション」「ロボティクスおよびスマートオートメーションシステム」「次世代通信技術」「スマートシティ」などの分野で、市場ニーズに適合した革新的な製品・サービスの共同開発を推進する。

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シャープの呉柏勲副会長(鴻海でインド事業統括責任者を兼務)は「鴻海はシャープに強い関心を持ち続けている。この数年でシャープの財務状況は大幅に改善。カメラモジュールや半導体のアセットライト化に鴻海が貢献してきた経緯もある。亀山第2工場は双方で議論を重ねたが、最終的に終息することが両社にとって良いと判断した。鴻海はシャープをサポートし続け、シャープの経営が安心の段階から希望の段階に入れるよう支援したい」と述べた。

河村社長も「鴻海との協業で新規事業が実を結ぶ結果を示すことが、株主の安心につながる。成果を形で示し、鴻海との関係に対する懸念を払拭したい。シャープの希望につながる」と語った。

ペロブスカイト太陽電池の開発状況

株主からの質問に応じ、常務執行役員Co-COO兼スマートライフビジネスグループ長の菅原靖文氏は「ペロブスカイト太陽電池の技術検討をしっかり進めている。ペロブスカイトとシリコンを融合したタンデム型を開発中で、2027年度にはサンプル出荷する。ペロブスカイト太陽電池はキーデバイスの一つになると捉え、開発を進めている」と説明した。

家電事業と商品品質への課題

日本の家電業界再編について、河村社長は「B2B分野出身の私が社長になったことで、シャープもB2B企業になるのかと聞かれるが、フィジカルAIやAIエージェントが一般生活に入ることを考えると、B2BやB2Cという切り分けはなく、一日中人に寄り添う必要がある。これがシャープの目指す方向であり、コモディティ化したハードウェアの売り切り社会との差別化になる。ただし、ソロホームランでは仕方ない。つないで、つないで、つないでいくことが大切。ビジネスモデルやAIを駆使したソリューションで使い続けてもらうことで、売上や利益が積み上がる」と述べた。

一方、株主からはスマホやPC、テレビなどの不具合・故障の多さ、消費者目線の不足、元気のある製品が出ていないとの指摘や、株価への不満が相次いだ。

河村社長は「かつての緊急プロジェクトのような全社横断で技術を集めたモノづくりができていない。社内の技術共有が不足し、どの技術を生かして優位性を発揮するか、方向性を決めることが不足していた。元気な商品が生まれていない反省もある。中央で新たな取り組みを開始し、各事業を横串に技術交流を図りながら、緊プロを発展させる形で取り組んでいる。研究開発本部は5年先、10年先の技術開発を進めてきたが、CTOの新たな役割は事業実装を進めることになる」と述べた。

徳山満執行役員CTOは「かつての緊プロのように全社横断で何かを作るプロジェクトが少ないと感じている。2026年4月から技術開発、要素開発、研究開発のメンバーをバーチャルでつなぎ情報共有を開始。この中から新たな事業や技術の組み合わせを模索する。研究開発から社会実装までのリードタイムを短くする取り組みを進めている。デバイス中心の新事業創出は難しくなっているが、緊プロは現在I-Proとして進化。新たなプログラムに焼き直し、半歩先を実現するシャープらしい商品を投入したい」と語った。

なお、株主総会の所要時間は85分。本店所在地を堺市から大阪市に変更する定款一部変更を含む第1号議案から第3号議案はすべて可決された。