RIZAPグループの瀬戸健社長は、過去に193億円もの赤字を計上した経営危機について、「失敗と思ったことはない。すべては実験だ」と断言する。健康社会インフラを掲げる「chocoZAP」事業が急成長する同社のトップが、オリコンニュースの独占インタビューで、失敗を糧にするマインドセットを明かした。
「失敗」ではなく「実験」──データ蓄積の重要性
瀬戸社長は、新卒社員が配属される時期に当たり、自身の経験を振り返りながらこう語る。「私はこれまでの経験を失敗だと思っていません。すべては実験です。AIも蓄積されたデータから答えを導き出す。データがなければ何も生み出せない」。人間も同様で、幼少期に「バカ!」と言って怒られた経験や、「ありがとう」で喜ばれた経験がすべて行動データとして蓄積され、次の行動を選択する基盤になるという。
「新しいデータを貯める実験をしなければ、自分の可能性を最大化できない。すべてはデータの積み重ねです」と強調する。自身の経験則から「こうしたらこういう結果が出る」と語れるのは、誰よりも多くのデータ検証を行ってきたからだとし、「本を読むのも重要だが、痛みを伴って刻み込んだリアルなデータに勝るものはない」と述べた。
最悪のケースを検証すれば、意外と何とかなる
瀬戸社長は、人間が恐れる「最悪のケース」の多くは冷静に検証すれば取り返しがつかないものではないと指摘する。「少なくとも命までは失わない。失恋しても世の中には何十億人も人がいる。友達と喧嘩しても、会社を辞めても、一時の不安に襲われるだけで、冷静に見つめ直せば大したことではない」。そうした考え方の背景には、企業家としての現実的なリスク計算がある。
夫婦で会社を創業した際、海外のデータで「1000億円以上の資産を築いた経営者は平均3~4回会社を潰している」という記述に触れたという。「それなら自分も4回チャレンジしようと計算しました。まず自分の貯金、次に妻の貯金、次は私が保証人、最悪の場合は破産。最後は妻の保証でやる。これで4回チャレンジできる」。仮に4回すべて失敗した場合の「最悪のケース」を試算すると、夫婦でアルバイトをすれば月40万円程度稼げ、日本国内で一定の生活は可能だという。「それが私にとっての最悪の正体。そう思えば何も怖くない。1回の失敗を過大解釈して人生の終わりだと不安になる必要はない」と語る。
193億円赤字の謝罪会見、中学生の息子に見せた理由
2019年3月期に構造改革費用の計上などで発生した193億円の赤字。当時、中学生だった息子に謝罪会見の映像をあえて見せたエピソードを瀬戸社長は明かす。「パパは格好悪いところもあるけれど、絶対に逃げないからね」と伝えたという。その理由について、「人間は自分のためではなく、誰かのためにこそ覚悟が生まれる。覚悟を持てば自信が後からついてくる。どんなことがあっても絶対に成し遂げる覚悟が決まれば、あとはやるだけ。成功する確率は高くなる」と説明する。
また、「電車でお年寄りに席を譲った時、譲った側も嬉しくなる。サプライズを仕掛けた側が、された側より感動して泣くこともある。これらはすべて、人に何かをギブしているようで、実は自分自身が一番大きな心の充足感を得ている」と、ギブの精神が自己成長につながると説く。
自責の精神が成長の源泉
193億円の赤字をポジティブなエネルギーに変えられたのは「覚悟」の重みがあったからだという問いに、瀬戸社長は「データの蓄積をして何も学ばずに終われば、それはただの損失。成功している人ほど、失敗の大小にかかわらず貪欲にデータとして学びを吸収している。新卒であろうとベテランであろうと、成長したい人は失敗からも成功からも学びを得る。逆にデータ蓄積できない人は、取り組みを他人のせいにして自責にしていないことが多い。自分のせいで失敗したと思えば痛みはあるが、次に活かせる。自責に捉えることこそが最大の成長の源泉だ」と語る。
組織への落とし込み:愛情と関心でポテンシャルを引き出す
最後に、「誰が為に」のマインドを組織にどう継承するかについて、瀬戸社長は「好きの反対は無関心」という言葉を引用し、「メンバーに対して深い愛情と関心を常に持ちたい。愛情があるからこそ、『この人はもっとできるはずだ』とポテンシャルに期待し、最大限に活かせる環境を提供したい。新卒であっても可能性のある人間にはどんどん新しいチャレンジをさせ、経験という名のデータを積ませていきたい。それが私の考える育成であり、継承の形です」と締めくくった。



