国連の楽観的な宣言から四半世紀
2000年、国連はミレニアム宣言(Millennium Development Goals)を採択し、2015年までに貧困を半減、2025年までに撲滅する目標を掲げた。しかし、その後の世界経済は予想を大きく裏切る展開を見せている。神奈川大学名誉教授の的場昭弘氏は、この幻想が崩れた背景を分析する。
なぜ先進国で貧困が再燃したのか
100年以上前の1916年、河上肇の『貧乏物語』は「先進国イギリスでなぜ貧困が存在するのか」という問いを投げかけた。21世紀に入り、同じ問いが再び先進国で浮上している。2000年当時、ソ連崩壊後のグローバリゼーションが発展途上国の急速な成長をもたらすと期待されたが、実際には先進国内での所得格差拡大や貧困層の増加が顕著になった。
『フラット化する世界』と『貧困の終焉』の誤算
トーマス・フリードマンの『フラット化する世界』やジェフリー・サックスの『貧困の終焉』は、グローバリゼーションが貧困を解消するという楽観論を広めた。しかし、現実は異なる。ブランコ・ミラノヴィッチの「エレファントカーブ」が示すように、グローバルな所得成長は中間層と富裕層に偏り、先進国の低所得層は取り残された。
後進諸国の2つの道:従属か独立か
的場氏は、後進諸国が「欧米への従属」か「欧米からの独立」かの岐路に立たされていると指摘する。中国やインドなどの一部の国々は独立した成長を遂げたが、多くのアフリカ諸国や南アジア諸国は依然として貧困から脱却できていない。
グローバリゼーションへの反発と新たな潮流
1999年のシアトルWTO反対デモに象徴されるように、グローバリゼーションへの反対運動は拡大した。オルタ・グローバリゼーション運動は、下からのグローバルな連帯を模索したが、その後の政治的な分断や保護主義の台頭によって道半ばで終わった。
21世紀の貧困問題の本質
2000年のミレニアム宣言から四半世紀、貧困問題は単なる所得不足ではなく、格差、気候変動、紛争、パンデミックなど複合的な要因が絡む。国連や経済学者が想定した単線的な発展モデルは崩れ、新たな視点が求められている。



