トランプ前大統領が推進した関税政策が、米国経済全体としては打撃となった可能性があるとする調査結果が、米シンクタンクのピーターソン国際経済研究所から発表された。同研究所の報告書は、2018年から2020年にかけて実施された関税が、特定産業の保護に寄与した一方で、消費者物価の上昇や雇用の減少など、経済全体に悪影響を及ぼしたと指摘している。
関税の効果と副作用
報告書によると、鉄鋼やアルミニウムなどに対する関税は、対象となった国内産業の生産拡大や雇用維持に一定の効果をもたらした。しかし、その恩恵は限定的で、関税による輸入品価格の上昇がサプライチェーン全体に波及し、関連産業のコスト増や雇用削減を引き起こした。特に、関税対象の原材料を使用する製造業では、競争力の低下や輸出減少が顕著だったという。
同研究所のシニアフェロー、ゲイリー・ハフバウアー氏は「関税は一部の産業を救ったが、他の多くの産業や消費者に損害を与えた。全体として、米国経済は関税によって純損失を被った」と述べている。報告書は、関税が米国の実質GDPを約0.3%押し下げ、約30万人の雇用を減少させたと試算している。
消費者への影響
消費者への影響も大きかった。関税により、家電製品や自動車、日用品などの価格が上昇し、特に低所得世帯の負担が増大した。報告書は、関税が家計に年間約500ドルの追加負担をもたらしたと推定。また、米国の貿易相手国からの報復関税も、農産物や工業製品の輸出減少を通じて、米国経済にさらなる打撃を与えた。
ハフバウアー氏は「関税は短期的な政治的利益のために用いられたが、長期的には米国経済の競争力を損なう結果となった」と批判。さらに「バイデン政権が一部の関税を継続していることは、経済回復の妨げになりかねない」と警告した。
今後の展望
報告書は、今後の貿易政策について、関税に依存しない対策を提言している。具体的には、国内産業の競争力強化のための研究開発投資や、労働者の再訓練プログラムの拡充、貿易協定の活用などを挙げている。また、中国との貿易摩擦を解決するためには、関税ではなく、世界貿易機関(WTO)のルールに基づいた対話が重要だと指摘している。
同研究所の所長、アダム・ポーゼン氏は「関税は有効な政策手段ではなく、むしろ経済成長の阻害要因となる」と述べ、米国が保護主義から脱却し、自由貿易の推進に回帰すべきだと主張している。



