ドナルド・トランプ前米大統領は15日、米テネシー州ナッシュビルで開催された暗号資産(仮想通貨)業界の大規模イベント「ビットコイン2026」で基調演説を行い、自身が大統領に再選された場合、業界を積極的に支援する方針を明確に打ち出した。この発言を受け、ビットコインの価格は一時過去最高値を更新し、市場全体が大きく沸騰した。
トランプ氏、暗号資産への全面的な支援を約束
トランプ氏は演説で、「私はアメリカを世界の暗号資産の首都にする」と宣言し、現政権の規制強化路線を厳しく批判した。特に、証券取引委員会(SEC)のゲーリー・ゲンスラー委員長の姿勢を「暗号資産への戦争だ」と非難し、自身の政権では初日にゲンスラー氏を解任すると明言。さらに、政府が押収したビットコインを戦略的備蓄として保持する計画や、暗号資産マイニングの国内促進策を打ち出した。
トランプ氏は「私は暗号資産に懐疑的だったが、今ではその可能性を完全に理解した」と述べ、自身の立場の変化を強調。2021年のインタビューでビットコインを「詐欺に近い」と批判していたことから、業界関係者の間では驚きと歓迎の声が広がった。
市場の反応とビットコイン最高値更新
トランプ氏の演説後、ビットコインの価格は急騰し、同日中に1ビットコインあたり7万5000ドルを突破。これは従来の最高値である2024年3月の7万3797ドルを上回るもので、時価総額も1兆5000億ドルを超えた。イベント会場では参加者から大きな拍手と歓声が上がり、一部のトレーダーは「トランプ・ラリー」と称した。
市場アナリストのジェームズ・ウォーカー氏(コインデスク・リサーチ)は、「トランプ氏の発言は、規制不確実性が最大のリスクだった暗号資産市場にとって、大きな追い風となる。特にSEC委員長の解任表明は、業界の長年の懸念を払拭するものだ」とコメントした。
政治的文脈と業界の反応
トランプ氏の暗号資産支援は、2026年11月の中間選挙を見据えた戦略の一環とみられる。暗号資産業界は近年、政治献金を積極化しており、2024年の選挙サイクルでは業界関連の政治活動委員会(PAC)が1億ドル以上を支出。トランプ氏はこうした資金力のある業界を味方につけることで、共和党内での求心力を高めたい考えだ。
一方、暗号資産取引所コインベースのブライアン・アームストロングCEOは声明で「超党派での規制枠組みの構築が必要だ」と述べ、トランプ氏の提案に慎重な姿勢を示した。また、環境団体からは、ビットコインマイニングの電力消費増加への懸念も出ている。
今後の展望と課題
トランプ氏の提案は、暗号資産業界に短期的な楽観をもたらしたが、実現には多くのハードルがある。大統領権限でSEC委員長を解任することは法的に可能だが、議会の承認が必要な政策も多い。また、戦略的備蓄計画には、議会の予算承認や財務省との調整が不可欠だ。
暗号資産専門メディアの「コインテレグラフ」は、トランプ氏の演説を「暗号資産の主流化における転換点」と評価する一方、「規制の明確化なくして持続可能な成長はない」と指摘。業界は今後、トランプ氏の公約が具体的な政策に落とし込まれるかどうか、注視していく必要がある。



