東京都心の中古マンション市場、価格上昇一辺倒から局面転換へ
最初に結論:東京都心の中古マンション市場は価格上昇一辺倒の局面を終えつつある。今後は価格の高さではなく、物件ごとの流動性や需給バランスが重視される。
重要ポイント
- 港区や中央区湾岸部など高価格帯マンションで在庫増加が進行。売り出し件数に対して成約が伸びず、価格と需要の乖離が生じている。
- 2024年の日銀によるゼロ金利政策解除や金利上昇、中国経済の減速などを背景に、都心タワーマンションへの投資需要が弱まった。
- 市場全体の暴落ではなく、一部の高騰物件で価格調整が進む可能性が高い。実需に見合った価格への適正化が進むとみられる。
マンションリサーチは6月12日、東京都23区内の中古マンション市場動向に関する調査結果を発表した。2024年1月から2026年3月までに公開された東京都23区内の中古マンション売出情報18万2,367事例を対象に統計処理を行い、同社の不動産データ分析責任者である福嶋真司氏が分析した。
東日本不動産流通機構のレインズタワーレポートによると、首都圏の中古マンション市場はコロナ禍以降に一貫して価格上昇を続けてきたが、2026年5月度の首都圏成約㎡単価が73カ月ぶりに減少へと転じた。特に流通ボリュームの大きい都心3区(千代田区・中央区・港区)での下落幅が比較的大きく、市場は一律の「価格上昇」から「価格と流動性のバランスが問われる相場」へと局面が変化しつつある。
平均価格8,000万円以上のシンボリックな高価格帯マンションの在庫推移を分析したところ、港区や中央区湾岸エリアなどこれまで価格上昇をけん引してきた物件群で、在庫の増加傾向が目立っている。これらのエリアは投資需要や海外マネーの流入が多かった地域であり、かつては売り出せば短期間で成約していたが、現在は売り出し件数の増加に対して成約が伸びず在庫が積み上がっている。
これはマンションが余っているという状況ではなく、市場参加者が想定する価格と、実際の需要者が受け入れられる価格との間にギャップが生じているためであるという。一方、周辺の一般的な住宅エリアや中価格帯マンションでは適正価格の物件が選ばれており、一定の流動性と安定した取引が維持されている。
在庫増のシンボリックマンションを例に、販売価格と在庫推移の関係を分析したところ、2021年7月から2024年5月頃まで在庫が極めて低水準だった。市場流通数が少ないため成約件数も限定的だが、出れば短期間で売れるほど流動性は高かった。
しかし2024年6月以降は状況が変化する。市場在庫が徐々に積み上がり始めたものの成約はほとんど増えず、新発の売出住戸が成約に至らずに在庫化する事態が発生している。
この在庫増加の背景には、2024年7月の日本銀行による実質的なゼロ金利政策解除がある。金利上昇局面への移行が住宅ローン負担の増加や期待利回りの見直しを促し、市場心理に変化を与えた。さらに2026年1月頃には政策金利が1%近辺まで上昇したほか、中国経済の減速やインバウンド需要の変化が重なり、都心タワーマンションを支えてきた投資需要が弱まったことで在庫増が加速した。
実際の成約状況から見ると2024年7月頃の価格が一つの到達点であったと推測されるが、売主側は過去最高値を前提とした価格設定を続けている。
今後は過度に価格が上昇した一部の物件を中心に一定の価格調整が行われる可能性があるが、これは市場全体の暴落ではなく実需層の購入可能な水準への適正化の過程である。人口や雇用の集積、交通利便性といった都心の優位性は依然として存在しており、今後の市場は上昇率ではなく物件ごとの流動性や需給関係を見極める時代へと移行していくと考えられる。



