2020年以降、共働き夫婦がペアローンでタワーマンションを購入するケースが急増した。しかし、金利上昇と管理費等の増加が重なる現在、その苦しさは湾岸エリアだけにとどまらず、首都圏郊外では「売るに売れない」状況が広がりつつある。不動産エージェントでらくだ不動産副社長執行役員の山本直彌氏は、35年ローンに潜む「本当の落とし穴」を指摘する。
低金利時代に広がったペアローンという選択
ペアローンとは、夫婦それぞれが個別に住宅ローンを契約する仕組みだ。例えば1億2000万円の物件を購入する際、夫6000万円・妻6000万円のように借り入れを分担する。1人では到底届かない物件価格でも、2人分の年収を満額で審査に使えるため、借入可能額を最大化できる。
このペアローンが急速に普及した背景には、コロナ禍以降の不動産価格高騰がある。山本氏は「コロナ禍で在宅ワークの需要が増え、『もう一部屋ほしい』というニーズが高まりました。しかし、賃貸では賃料が大幅に上がってしまうため、低金利の時代でもあったことから『だったら買ったほうがいい』という判断が広がり、住宅を持っていない一次取得者が一斉に動き出したのです」と説明する。需要が急増する一方で、コロナ禍で自由に動けないことから売り手が減り、価格がどんどん上がっていった。
その後、2022年頃からは円安による海外マネーの流入が加わった。当時は「海外投資家が何部屋もまとめ買いしている」とも言われていた。円安も相まって、日本の、特に東京の不動産が世界的には割安に映り、海外からの需要がさらに価格を押し上げた。こうして、共働き夫婦が職住近接の駅近マンションを求めると、フルローンに加えペアローンでなければ買えない水準にまで達してしまった。
郊外は「売るに売れず、逃げ場もない」
金利上昇局面に入った現在、ペアローンのリスクが顕在化している。山本氏は「湾岸エリアのタワマンはまだ流動性があるが、首都圏郊外では状況が異なる。郊外の物件は需要が限られており、売りに出しても買い手がつかない。『売るに売れず、逃げ場もない』状態に陥っている」と警鐘を鳴らす。
特に問題となるのは、変動金利型のペアローンを組んだ世帯だ。金利上昇により月々の返済額が増加し、管理費や修繕積立金の値上げも重なる。山本氏は「共働きでなんとか返済してきたが、金利上昇で家計が圧迫され、子どもを持つ余裕すら失っているケースもある」と指摘する。
さらに、郊外では物件価格の下落も進行している。購入時よりも資産価値が下がり、ローン残高が物件価格を上回る「負の資産」となるリスクも高い。山本氏は「35年ローンを組んだ時点で、将来の金利上昇や収入変動を考慮していなかったことが根本的な問題だ」と述べる。
ペアローン破綻を防ぐには
山本氏は、ペアローンを検討する際には、金利上昇リスクを織り込んだ返済計画を立てるべきだと強調する。「変動金利ではなく、固定金利を選択する、あるいは繰り上げ返済の計画を事前に立てることが重要だ。また、共働きが継続できるかどうか、出産や育児による収入減少も考慮すべきだ」とアドバイスする。
さらに、既にペアローンを組んでいる世帯に対しては、「管理費や修繕積立金の将来見通しを確認し、家計の見直しを早急に行う必要がある。場合によっては、住み替えや売却も視野に入れるべきだが、郊外では売却が困難なため、早めの行動が求められる」と警告する。
金利上昇は、低金利時代に安易にペアローンを選択した世帯に大きな試練をもたらしている。湾岸タワマンだけでなく、首都圏郊外でも「沈む人」が増えつつある今、住宅ローンの本質的なリスクと向き合う時が来ている。



