金利上昇で不動産の「三極化」が加速、売却の成否は駅徒歩とエリアで9割決まる
金利上昇で不動産三極化、売却可否は駅徒歩とエリアで9割決まる

金利上昇局面において、不動産市場は「三極化」の様相を強めている。不動産相続コンサルタントの髙橋大樹氏(宅地建物取引士、一級建築士、不動産相続アーキテクツ代表)は、相続した実家の扱いについて、「黙っていても高く売れる物件」「適正価格なら売れる物件」「売れない物件」の3つに分かれると指摘する。相続を機に「大きな財産になるかもしれない」と期待する人ほど、現実とのギャップに戸惑う傾向があるという。

相続した実家は「三極化」の中にある

髙橋氏は、現在の日本の不動産市場が明確な三極化状態にあると説明する。第一の極は、需要が高く、販売活動をほとんど行わなくても高値で取引される物件。第二の極は、市場価格に見合った適正な価格設定を行えば、比較的スムーズに売却できる物件。そして第三の極は、価格を大幅に下げても買い手がつかない、いわゆる「売れない物件」である。

この三極化は、金利上昇によってさらに加速している。低金利時代には資金調達が容易だったため、立地や築年数がやや劣る物件でも需要があったが、金利上昇により借入コストが増加し、購入者の選別が厳格化している。結果として、優良物件とそうでない物件の格差が拡大している。

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10年で倍になる町と下がり続ける町

地域による不動産価格の二極化も顕著だ。人口減少社会の中で、一部の都市部や利便性の高いエリアでは地価が上昇し続けている一方、地方や郊外では資産価値が下落し続けている。髙橋氏によれば、同じ都道府県内でも、駅からの徒歩時間や周辺の商業施設の充実度によって、10年で価格が倍になるエリアと半減するエリアが存在するという。

特に、駅から徒歩10分以内の物件は需要が堅調だが、徒歩15分を超えると売却が難しくなる傾向がある。また、最寄り駅の乗降客数や、周辺のスーパー、病院、学校などの生活インフラの充実度も、物件の価値を大きく左右する。

売却可否の9割は「駅徒歩」と「エリア」

髙橋氏は、相続した実家の売却の成否は、約9割が「駅からの徒歩時間」と「エリアの特性」で決まると断言する。具体的には、駅徒歩10分以内で、かつ人口増加エリアや再開発が進むエリアに位置する物件は、高値での売却が期待できる。逆に、駅徒歩15分以上で、人口減少エリアや交通不便な場所にある物件は、売却が極めて困難になる。

また、物件の築年数や状態も重要だが、立地条件が悪ければ、リフォームやリノベーションを施しても買い手がつかないケースが多い。そのため、まずは物件の立地を客観的に評価し、売却可能性を見極めることが重要だとしている。

空き家のままだと実家は急速に劣化していく

相続した実家を空き家のまま放置すると、建物は急速に劣化する。特に日本の木造住宅は、定期的なメンテナンスが必要であり、換気や通気を怠ると、湿気による腐朽やシロアリ被害が発生しやすくなる。髙橋氏によれば、空き家の状態が3年を超えると、屋根や外壁の損傷、雨漏り、内部のカビ発生など、修復に多額の費用がかかる問題が生じ始めるという。

さらに、空き家は防犯上のリスクも高まる。放置された家屋は、不法侵入や放火の標的になりやすく、近隣住民からの苦情や行政からの指導を受ける可能性もある。結果として、資産価値の低下だけでなく、周辺環境の悪化や社会的なコストの増大を招くことになる。

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決断はなぜ「3年以内に」なのか?

髙橋氏は、相続した不動産の処分や活用の決断は、相続発生から3年以内に行うべきだと強調する。その理由は、まず相続税の申告期限が相続開始から10カ月以内であること。さらに、空き家の状態が長期化すると、建物の劣化が進み、売却や賃貸が困難になる。また、相続人の間での意見調整が長引くと、関係が悪化し、最終的に売却や活用の機会を逃すケースが多いからだ。

実際に、髙橋氏の相談事例では、相続から5年以上経過してから相談に来るケースが少なくないが、その時点では建物の価値が大幅に減少していたり、相続人間の対立が深刻化していたりして、有効な対策を打てないことが多いという。

売りたくない人は「現状渡しの定期借家」

相続した実家を手放したくない場合の選択肢として、髙橋氏は「現状渡しの定期借家」を提案する。これは、建物を現在の状態のままで賃貸に出す方法で、大規模なリフォームや修繕を行わずに収益を得られるメリットがある。定期借家契約は期間が定められているため、将来的に売却や建て替えを検討する際にも柔軟に対応できる。

ただし、賃貸に出す場合でも、建物の基本的な安全性や居住性を確保するための最低限の修繕は必要になる。また、入居者を募集する際には、不動産会社と適切な賃料設定や契約条件を協議することが重要だ。

戸建ての解体費用は10年でおよそ2倍に

建物を取り壊して更地にした場合、解体費用が近年高騰している。髙橋氏によれば、ここ10年で戸建て住宅の解体費用は約2倍に上昇しており、今後も上昇傾向が続くと予想される。例えば、一般的な木造住宅の解体費用は、以前は50万~80万円程度だったが、現在は100万~150万円以上かかるケースが増えている。

解体費用の高騰は、人件費や廃材処分費の上昇が主な要因である。また、アスベスト(石綿)を含む建材を使用している場合、除去費用がさらに加算される。そのため、相続した物件を更地にして売却する場合、解体費用を考慮した上で、最終的な手取り額を試算する必要がある。

隣接地を欲しがる人は意外に多い

相続した土地や建物の売却先として、隣接地の所有者が買い手になるケースが意外に多いと髙橋氏は指摘する。隣接地を所有する人は、敷地を拡張したい、あるいは境界線の問題を解消したいといったニーズを持っていることがあり、市場に出回っていない物件でも、直接交渉によって売却が成立することがある。

特に、旗竿地や不整形地など、一般の購入者にとっては魅力が薄い土地でも、隣接地の所有者にとっては有効活用できる場合がある。そのため、売却を検討する際には、まず周辺の土地所有者に打診してみることも一つの方法だとしている。

「買いたい人がいるので測量費を払ってください」

不動産取引において、買い手が見つかった場合でも、測量や境界確定が必要になることがある。髙橋氏は、買い手から「購入したいので測量費を負担してほしい」と依頼されるケースが増えていると述べている。測量費用は一般的に20万~50万円程度かかるが、これを売主が負担することで、売却がスムーズに進むことが多い。

また、相続した土地の境界が不明確な場合、測量によって隣地との境界を確定させる必要がある。この作業を怠ると、後日トラブルに発展する可能性もあるため、売却時には積極的に測量を行うことが推奨される。