トヨタ自動車が、水素を燃料とするエンジン車の量産を2026年に開始する計画であることが明らかになった。同社はこれまで水素エンジン車の研究開発を進めており、2024年には市販化に向けた技術的めどが立ったとしている。
水素エンジンの仕組みと優位性
水素エンジンは、従来のガソリンエンジンをベースに、燃料を水素に変更したもの。水素を燃焼させることでCO2を排出せず、ほぼ純粋な水蒸気のみを排出する。また、燃料電池車(FCV)に比べてシステムが簡素で、コストを大幅に低減できる可能性がある。
トヨタは、水素エンジン車の航続距離を800km以上と見込んでおり、これは同社のFCV「MIRAI」の約750kmを上回る。さらに、燃料タンクの高圧化やエンジン効率の向上により、さらなる延長も視野に入れている。
量産化のスケジュールと搭載車種
2026年の量産開始を目標に、2025年には生産ラインの整備を完了する予定。当初は商用車(トラックやバス)に搭載し、その後、スポーツカーや乗用車への展開を検討する。トヨタはすでに、水素エンジンを搭載した「GRヤリス」や「GRカローラ」のプロトタイプを公開しており、実走テストを重ねている。
トヨタの水素エンジン開発責任者は「水素エンジンは、内燃機関の技術を活かしつつカーボンニュートラルを実現する現実的な選択肢だ。量産化により、コスト面でもFCVに優位に立ちたい」と述べている。
水素インフラの課題と政府の支援
水素エンジン車の普及には、水素ステーションの整備が不可欠だ。日本国内の水素ステーションは約170か所と限られており、特に地方での整備が遅れている。経済産業省は、2030年までに水素ステーションを1000か所に増やす目標を掲げており、トヨタもインフラ整備に協力する方針。
また、水素の製造コストも課題だ。現在、水素は主に天然ガスから製造されており、製造過程でCO2が排出される。トヨタは、再生可能エネルギー由来の「グリーン水素」の利用を促進するため、製造技術の開発にも取り組んでいる。
競合他社の動向と市場展望
水素エンジン車の開発は、トヨタのほかにも、BMWや現代自動車などが進めている。BMWは2025年に水素エンジン車の限定生産を計画。しかし、コスト面やインフラ整備の難しさから、量産化に踏み切るメーカーは限られている。
市場調査会社によると、水素エンジン車の世界市場は2030年に約50万台、2040年には500万台に拡大する見通し。ただし、EV(電気自動車)の急速な普及により、水素エンジン車のシェアは全体の数%にとどまると予測されている。
トヨタの電動化戦略と水素エンジンの位置づけ
トヨタは、EV、FCV、水素エンジン車、ハイブリッド車(HV)など、複数の電動化技術を並行して開発する「マルチパスウェイ戦略」を掲げる。水素エンジン車は、その中でも特に商用車や、内燃機関のフィーリングを重視する顧客向けに位置づけられている。
同社は、2030年までにEVの販売台数を350万台とする目標を掲げる一方、水素エンジン車については具体的な販売目標を公表していない。しかし、水素エンジン技術の確立により、水素社会の実現に向けた一歩を踏み出すことになる。



