電気自動車(EV)の普及が加速する中、全国のガソリンスタンドが急速に減少している。業界団体の調査によれば、2025年までに現在の約2万9000カ所から約1万9000カ所へと、実に3割以上が姿を消す見通しだ。この減少ペースは過去10年間で最も速く、特に過疎地や地方都市で顕著となっている。
給油難民が続出、生活への影響深刻
ガソリンスタンドの撤退が相次ぐ地域では、住民が給油のために数十キロ離れた店舗まで移動する「給油難民」が発生。高齢者や交通手段を持たない世帯にとっては死活問題だ。ある地方自治体の担当者は「ガソリンスタンドがなくなれば、通院や買い物が困難になる。地域の生活インフラとしての役割をどう維持するかが課題」と語る。
経済産業省のデータでは、2023年のガソリンスタンド数は約2万9000カ所で、ピーク時の1994年(約6万カ所)から半減。特に2010年以降はEV補助金の拡大や燃費向上により、ガソリン需要が年率2~3%で減少していることが背景にある。
物流網への波及、配送コスト増大
ガソリンスタンドの減少は一般消費者だけでなく、物流業界にも打撃を与えている。トラック運送業者は長距離ルートで給油可能な地点を確保するのが難しくなり、迂回や給油待ちによるコスト増が発生。日本トラック協会の試算では、2025年までに全国の配送コストが平均5%上昇する可能性があるという。
「特に北海道や東北、中国地方の山間部では、給油所間の距離が100キロを超えるケースも出てきている。緊急時の燃料補給が困難になるリスクがある」と、業界関係者は懸念を表明する。
EV充電インフラ整備の遅れが課題
ガソリンスタンドの代替として期待されるEV充電スタンドの整備も遅れている。2024年末時点で全国の急速充電器は約2万基だが、ガソリンスタンドの減少ペースに追いついていない。政府は2030年までに30万基の充電器設置を目標に掲げるが、現状の設置ペースでは達成が困難との指摘がある。
「充電インフラが整わなければ、EVへの移行が地方で進まず、結果的にガソリンスタンドの撤退だけが先行する」と、エネルギーアナリストの山田太郎氏は指摘する。「地域ごとに最適なエネルギー供給の在り方を考える必要がある」と述べ、水素ステーションやバイオ燃料など多様な選択肢の検討を促している。
地域経済への影響と対応策
ガソリンスタンドは単なる燃料供給所ではなく、コンビニや地域の交流拠点としての役割も果たしてきた。その閉鎖は雇用の喪失や地域コミュニティの衰退にもつながる。ある地方銀行の調査では、ガソリンスタンドが廃業した周辺地域では、小売店の売上が平均15%減少したケースもあるという。
これに対し、一部の自治体では、ガソリンスタンドを公営で運営する動きや、EV充電スタンド併設のハイブリッド型給油所への転換を支援する補助金制度を導入している。しかし、人口減少が続く地域では、事業としての持続可能性が課題となっている。
石油業界も対応に乗り出しており、出光興産やENEOSなどは、ガソリンスタンド跡地に太陽光発電や蓄電池を設置し、地域のエネルギー拠点として再活用するプロジェクトを始めている。ただ、こうした取り組みはまだ始まったばかりで、全国的な広がりには時間がかかるとみられる。



