豪レアアース企業がトリウム再利用宣言、日本だけ取り残される危険性
豪レアアース企業がトリウム再利用宣言、日本が取り残される

オーストラリアのレアアース生産大手ライナス社のCOO(最高執行経営者)であるポル・ル・ルー氏は、2026年5月17日にNHKが放映した番組「レアアース覇権の正体を追う」の中で、「トリウム(放射性物質)の再利用にも取り組んでいきます」と明言した。この発言は、レアアース生産に伴う外部不経済の内部化という観点から極めて重要な意味を持つ。

レアアース生産が生む放射性廃棄物トリウム

レアアースはモナザイトなどの鉱物を製錬して得られるが、モナザイトには放射性物質のトリウムが同伴している。レアアースを分離する後工程を汚染しないために、まずトリウムを分離する必要がある。分離されたトリウムは、利用されない限り放射性廃棄物となる。

外部不経済の内部化には大きく二つの方法がある。一つは廃棄物を無価値と認め、コストをかけて環境への漏洩を防ぐこと。もう一つは用途開発を行い、市場価値を与えて経済活動に組み込むことだ。ルー氏の発言は後者に当たる。

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トリウムは高温時の安定性から二酸化トリウムがるつぼに使われたり、白色発光性から白熱ガス灯のマントルとして利用されたりしてきた。しかし、全世界で数十万トン、オーストラリア産だけでも数千トン蓄積されているトリウムを消費し尽くすことはできない。

トリウムを消費できる唯一の方法:核燃料

トリウムを利用し、かつ消費することができるのは核燃料としてだけだ。この視点から、オーストラリアがどのようにトリウムに向き合ってきたかを見てみよう。

2006年、オーストラリアのマイケル・ジェフリー総督(当時)は「温暖化対策に太陽光は重要だが、トリウムの利用を排除してはいけない。トリウムは核兵器にならないからだ」と述べた。2008年6月には当時のラッド首相が広島を訪問し、「ヒロシマが世界を平和に向かわせるコミュニティー形成の起点となり、われわれアジア・太平洋地域の住人こそが核兵器のない世界への解決策を提示すべき」と述べた。

その後、ラッド首相は京都大学で講演会を開催し、筆者とトリウムの原子力について意見を交換した。筆者がトリウムについて意見を求めたところ、ラッド首相は「トリウムの利点はよく理解している、しかし問題はアメリカとの関係である」と述べた。当時は共和党のブッシュ政権であり、核兵器にならないトリウムの原子力について検討することは、核の傘の視点からオーストラリアの首相としてはアメリカに打診できないとのことだった。

20年前から始動したオーストラリアのトリウム研究

オーストラリアでは2000年代からトリウム研究が本格化している。シドニー大学やオーストラリア原子力科学技術機構(ANSTO)がトリウム溶融塩炉の基礎研究を進めてきた。特にANSTOは、トリウム燃料サイクルの実証試験を実施し、2025年には小型モジュール炉の設計に着手している。

チェコが開発したトリウム溶融塩炉

チェコでは、トリウム溶融塩炉の開発が進んでいる。チェコ工科大学と民間企業が協力し、2024年に試験炉の運転を開始した。この炉は、トリウムを燃料とし、溶融塩を冷却材として使用する。チェコ政府は、この技術を2020年代後半に商用化する計画だ。

トリウム技術の研究から取り残される日本

日本では、トリウム溶融塩炉の研究が遅れている。2011年の福島第一原発事故以降、原子力研究全体が停滞し、トリウムに関する予算も縮小された。現在、日本のトリウム研究は京都大学や東京工業大学などで小規模に行われているが、オーストラリアやチェコに比べると大幅に遅れを取っている。

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専門家は、日本がトリウム技術の開発から取り残されることで、将来のエネルギー安全保障に影響が出る可能性を指摘する。トリウムは核兵器に転用できないため、核不拡散の観点からも有望な燃料であり、国際的な開発競争が激化している。