国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)などの研究グループは、iPS細胞(人工多能性幹細胞)から作製した心筋シートを重症心不全患者に移植する臨床研究で、移植後の心機能改善が確認されたと発表した。今回の結果は、iPS細胞を用いた再生医療の実用化に向けた大きな一歩となる。
臨床研究の概要と成果
研究グループは、iPS細胞から心筋細胞を分化誘導し、シート状に加工した「iPS心筋シート」を、重症心不全患者に移植する臨床研究を実施。対象は、薬物治療や通常の外科手術では改善が見込めない患者で、これまでに複数例に移植を行った。
移植後の経過観察では、心臓のポンプ機能を示す左室駆出率(LVEF)が平均で約10%改善し、患者の自覚症状も改善。また、重篤な副作用や腫瘍形成は認められず、安全性も確認された。
再生医療の実用化へ前進
iPS細胞を用いた心筋再生医療は、これまで動物実験で有効性が示されていたが、ヒトでの臨床データは限られていた。今回の結果は、iPS細胞由来の心筋シートが重症心不全に対する有効な治療法となる可能性を示すものだ。
研究グループの責任者である国立循環器病研究センターの福田恵一部長は「今回の結果は、iPS細胞を用いた心筋再生医療の実用化に向けた重要なマイルストーンとなる。今後は症例数を増やし、長期的な有効性と安全性を確認していく」と述べている。
今後の展望
研究グループは、今後さらに症例を蓄積し、2027年にも治験を開始する計画。実用化にはまだ時間を要するが、心不全患者にとって新たな治療の選択肢となることが期待される。



