前方に飛び出した歯と小さな目、体毛はほとんどなく、肌はピンク色――。思わず二度見してしまうほど衝撃的な見た目を持つ「ハダカデバネズミ」。そんなネズミの生態に迫り、ヒトの健康への応用を探っているのが九州大医学研究院の長寿幹細胞医学研究室(通称「デバ研」)だ。主宰する教授の三浦恭子さん(46)に研究にかける思いなどを聞いた。(林尭志)
ハダカデバネズミとは
「アフリカ東部の地下に生息するネズミの一種で、体長は10センチ、体重は35グラム前後。私たちは『デバ』と呼ぶ。出っ歯は硬い土を掘るため、裸は高温多湿の土の中で体を冷ましやすくし、寄生虫からも身を守る上で都合がいいと考えられている」と三浦教授は説明する。
哺乳類では珍しく、アリやハチに似た分業制の集団社会を形成する。1家族75匹ほどの群れの中では1匹の雌と1~3匹の雄のみが繁殖に携わる一方、その他の個体は巣の防衛や餌の運搬などに従事し、支え合って生きている。
研究対象としての魅力
「デバの寿命は約30年、長い個体で40年にもなる。一般的に体重が軽い生物は短命だが、デバは同サイズのハツカネズミの10倍も長生きする。また、年齢を重ねても活動量や繁殖能力、臓器機能の低下といった老化の兆候がほとんど見られない。さらには、がんの発症率も人間などと比べて著しく低い」と三浦教授は語る。
これらの特性から、デバは老化やがんのメカニズム解明、さらにはヒトの健康寿命延伸につながる研究対象として注目されている。研究室では、デバの長寿遺伝子やがん抑制機構の解明を進めており、将来的には医薬品開発への応用も視野に入れている。
研究への思い
三浦教授は「知れば知るほど愛が深まる」とデバへの愛情を語る。一見グロテスクな外見とは裏腹に、その生態は驚くべき適応と社会性に満ちている。研究を通じて、デバの持つユニークな能力をヒトの健康に役立てたいと意気込んでいる。



