量子科学技術研究開発機構(量研機構)は1日、がんを狙い撃ちする放射線治療用の「重粒子線」装置の小型化につながるレーザー技術を開発したと発表した。従来の装置は大型の設備が必要で、治療施設が限られている。新技術を応用すれば小型化でき、整備コストも10分の1程度に減らせると期待される。
重粒子線治療の現状と課題
重粒子線治療は、重粒子線(炭素イオン線)を照射してがん細胞を攻撃する。体への負担が小さく、高齢者や進行・再発がんの患者も受けやすいのが特長だ。現在、前立腺や肝臓などのがんで保険適用されている。
一方、重粒子線を発生させるには大型の加速器が必要で、巨額の整備費がかかる。そのため、治療施設は大阪重粒子線センター(大阪市)や兵庫県立粒子線医療センター(兵庫県たつの市)など全国7か所にとどまっている。
レーザー技術による小型化への道筋
量研機構はこうした課題を踏まえ、大型の加速器の代わりに高出力のレーザー光を使うことで、装置を小型化するプロジェクトを進めてきた。
同機構関西光量子科学研究所(京都府木津川市)などのチームは今回、複数のレーザー光の波形をほぼぴったりと合わせることで、出力を高める手法を開発。シンプルな装置を作製し、実際に高出力なレーザー光を生み出せることを確認した。論文が、国際科学誌に掲載される。
今後の展望と専門家の評価
重粒子線の装置の長さは最大約120メートルに上るが、今回の技術を応用すれば約20メートルまで小型化でき、一般的な病院でも収容可能という。チームの桐山博光・同研究所グループリーダーは「治療を受けられる人が増えるとうれしい。レーザーを使った核融合研究など他の様々な分野の応用にもつなげたい」と話す。
大阪大レーザー科学研究所の余語覚文教授は「複雑な装置を用いずに、レーザー光の高精度な重ね合わせを実現した点に意義がある。さらなる高出力を達成できるかが今後の課題だ」と評価している。



