「ノーベル賞受賞者を囲むフォーラム~次世代へのメッセージ」が7月12日、東京都文京区の東京大学安田講堂で「未知なるものを追い求め」をテーマに開催された。2025年にノーベル賞を受賞した坂口志文・大阪大特任教授(生理学・医学賞)と北川進・京都大特別教授(化学賞)が講演やパネル討論で研究の歩みを語った。1973年に物理学賞を受賞した江崎玲於奈・茨城県科学技術振興財団理事長はビデオで特別メッセージを寄せた。会場には中高生ら約850人が参加した。
江崎氏「人生のシナリオ」を問う
江崎氏は特別メッセージで、若い人への三つの問いかけを紹介した。「我が人生、何をすべきか」「私はどんなタレントを持ち、何を得意とするか」「自分の天職が何か、何を使命とするか」とし、教育の最大の目的はこれらの問いに得心できる答えを得ることだと述べた。
また、ノーベル賞を取るためにしてはいけない5か条を提示。既成概念を超えること、大先生に過度に心酔しないこと、情報を選別すること、戦うことを避けないこと、初々しい感性と好奇心を失わないことなどを挙げた。
坂口氏「制御性T細胞」の発見
坂口氏は基調講演で、免疫の仕組みと自己免疫病について説明。「免疫が自分の体を壊す『自己免疫病』がある」とし、制御性T細胞(Tレグ)の発見に至った経緯を語った。Tレグの異常が自己免疫病を引き起こすとし、「Tレグの量を操作することで自己免疫病の治療やがん免疫、安全な臓器移植が可能になる」と述べた。
研究には長い時間がかかるとして、「情報をキャッチする自分特有の『網』を作る必要がある」と強調。疑問を持つ力と楽観性の大切さも訴えた。
北川氏「21世紀は気体の世紀」
北川氏は、エネルギー源の偏在と空気の遍在を対比し、「21世紀は気体の世紀」と主張。金属有機構造体(MOF)の開発により、空気中の二酸化炭素回収やメタンガス貯蔵が可能になると説明した。
「空気は地下資源と違い、どんな小さな国にも均等にある。まさに見えない『金』だ」とし、日本から平等な資源利用技術を発信する必要性を訴えた。また、読書の重要性や、化学研究者は作曲家であり指揮者であるべきだと語った。
パネル討論「批判を乗り越えて」
パネル討論では、初期の批判への対応が話題に。坂口氏は「人が何と言おうと、間違いないという確信があった」と述べ、北川氏は「違う分野に移るのは成功への道の一つだ」と語った。
未知なるものを追い求める意義について、坂口氏は「小さな喜びが一番の牽引力だ」とし、北川氏は「勇気、挑戦、好奇心の三つのCが大事」と強調した。
中高生へのメッセージ
中高生からの質問に、北川氏は「運鈍根」の大切さを説き、「あきらめずに粘り強く持続してほしい」と述べた。坂口氏は「時間がかかるのが当たり前」とし、英語学習の重要性にも言及した。
質疑応答では、本を読むことの価値や、自分の世界を広げる努力の必要性が語られた。



