ブラックホール撮影の新時代へ
2019年、人類初のブラックホール画像が公開され、世界中に衝撃を与えた。この画像を捉えたのは、地球規模で電波望遠鏡を連携させる「事象の地平線望遠鏡(EHT)」だ。現在、その次なる挑戦として、解像度を1000倍に高める「次世代事象の地平線望遠鏡(ngEHT)」計画が本格的に始動している。
なぜ解像度1000倍が必要なのか
EHTが撮影したM87銀河のブラックホール画像は、解像度が約20マイクロ秒角と、月面に置かれたバスケットボールを識別できるレベルだ。しかし、ブラックホール周辺のプラズマの流れや磁場構造、ジェットの発生メカニズムを詳細に調べるには、さらに高い解像度が不可欠。ngEHTはこれを1000倍に高め、ブラックホールの「影」の輪郭や、降着円盤の構造をより鮮明に描き出すことを目指す。
実現に向けた課題
ngEHTは、現在のEHTが持つ8つの観測所に加え、新たに数十の電波望遠鏡を世界各地に設置する計画だ。これにより、より長い基線長と多様な周波数帯での観測が可能になる。しかし、実現には数百億円規模の資金と、国際的な協力体制の構築が必須。特に、南極やアフリカなど未整備の地域への望遠鏡設置が鍵を握る。
期待される科学的成果
ngEHTの実現により、ブラックホールの質量やスピンの精密測定、一般相対性理論の検証、さらには銀河の進化におけるブラックホールの役割の解明が期待される。また、天の川銀河中心のブラックホール「いて座A*」の詳細観測も可能になり、銀河形成の謎に迫ることができる。
計画はまだ初期段階だが、世界中の研究者が協力し、2020年代後半の本格運用を目指している。ブラックホール研究は、新たな観測装置によってさらなる飛躍を遂げようとしている。



