H3ロケット8号機の打ち上げ失敗について、宇宙航空研究開発機構(JAXA)による最終報告がまとまった。原因は衛星搭載アダプタ(PSS)の剥離で、開発プロセスや組織体制に問題があったと分析。再発防止に向けた是正対策が示された。
失敗の直接原因と背景
2025年12月22日に打ち上げられたH3ロケット8号機は、準天頂衛星「みちびき5号機」を搭載。しかし、フェアリング分離時の衝撃でPSSが崩壊し、衛星が破損・脱落した。PSSはアルミハニカムコアをCFRPスキンで挟む構造で、製造工程で大きな剥離が発生。打ち上げ後の衝撃で剥離が拡大し、破壊に至った。
問題は、規定通りに製造・検査されていたにも関わらず剥離を見逃したこと。JAXAは開発プロセスをバリエーションツリー(VTA)で分析し、リスク管理の不備を特定した。
VTA分析で浮かび上がった3つの問題点
VTA分析により、以下の問題点が明らかになった。
- 詳細設計でPSSの試作試験が実施されず、フェアリングの試験で代用したこと。
- 輸送上の制約でスプライスを2分割する仕様変更が行われたが、影響評価が不十分だったこと。
- 認定試験後の検査で外観点検のみ行われ、内部調査が実施されなかったこと。
これらの問題が重なり、剥離を見逃す結果となった。
再発防止策と今後の展望
JAXAは再発防止策として、基本設計審査(PDR)と詳細設計審査(CDR)の評価能力を強化し、専門家の参画を拡充。さらに、認定試験後の検査を確実に実施し、非破壊検査や切断検査で内部状態を確認する方針だ。
H3プロジェクトマネージャの有田誠氏は「国際競争力を強化するため、チャレンジへの歩みは止めない。萎縮することはない」と述べ、若手人材の育成とベテランの知見を活かした開発環境の強化を目指す。将来的にはAIを活用したリスク抽出も検討しているという。



