瀬戸内海の播磨灘で、過去約25年間に生態系を支える栄養塩(窒素、リン)が半減したにもかかわらず、海の豊かさの指標となる植物プランクトンの基礎生産量は1990年代と同水準であることが、香川大などの調査でわかった。イカナゴなどの減少は、餌となる植物プランクトンの減少だけでなく、地球温暖化など様々な要因が絡むとみられる。論文が国際科学誌に掲載された。
栄養塩半減も生産量維持
播磨灘など瀬戸内海では高度経済成長期の1960〜70年代、植物プランクトンが異常増殖して赤潮が頻発した。国は対策を講じ、植物プランクトンの栄養分になる窒素やリンといった「栄養塩」の海への排出を規制した結果、赤潮の発生回数が3分の1以下に収まり、水質の改善が進んだ。
一方で、近年は瀬戸内海の春の味覚「くぎ煮」に使われるイカナゴの漁獲量は香川県では激減している。
透明度1.5倍向上、光が深く届く
同大瀬戸内圏研究センターの中国(なかくに)正寿助教らのチームは、食物連鎖に必要な生産力の指標となる基礎生産量に着目。栄養塩の減少がイカナゴなどの生態系に影響を与えているかを調べるため、2019年2月〜22年7月の毎月、香川県・小豆島沖の水深0〜30メートルの5地点で海水を採水し、基礎生産量を測定した。
その結果、植物プランクトンが光合成によって作り出す有機物の年間量は、3年間の平均で1平方メートルあたり約291グラムで、栄養塩が半減しているにもかかわらず、中栄養から富栄養の海域と同程度の量だった。また、同じ地点で海水の透明度は1990年代に比べ、1.5倍向上。より深い水深30メートルの地点にかけて植物プランクトンが光合成をしていることもわかった。チームは、透明度が改善された現在はより深くまで光が届き、広い範囲で有機物の生産が行われているとみている。
中国助教は「播磨灘の基礎生産量自体は低下していなかった。漁獲量の減少など瀬戸内海で生じている問題は、地球温暖化による海水温の上昇など複合的な要因を検証する必要がある」と話す。



