米国の環境ジャーナリスト、ベン・ゴールドファーブ氏の著書『道路をわたる動物たち 道路生態学からみる生き物たちの未来』(草思社、4070円)が、土壌学者で福島国際研究教育機構上席研究員の藤井一至氏によって評価された。本書は、道路上で車に轢かれる動物、いわゆるロードキルの実態を丹念に調査した重厚な一冊であり、藤井氏は「道路生態学」という言葉に新鮮さを覚えたという。
ロードキルが大量絶滅の一因に
著者のゴールドファーブ氏は、道路建設が生態系の破壊を招くと鋭く批判し、本書はレイチェル・カーソンの名を冠した賞を受賞した。藤井氏によれば、ロードキルは史上6度目の大量絶滅の一因となっている。道路への進入を防ぐフェンスはロードキルを減少させるが、群れの移動を制限するため、遺伝子の多様性を減少させるというジレンマも指摘されている。
横断路や夜間通行止めで減少効果
一方で希望もある。生息地を分断する道路の下に横断路を作ることで、シカのロードキルを90%以上減少できた事例が紹介されている。さらに、カエルやカメのロードキルを防ぐため、道路を夜間通行止めにし、バケツで救助する活動も行われている。著者は、道路が死肉を求めるハゲワシの楽園となることに対し、人間も食べて責任をとるべきだというユニークな提案もしている。
自動運転のリスクと人種差別の視点
自動運転技術によってロードキルを避けられる可能性がある一方、無人夜間運転の増加でロードキルが増加する懸念も示されている。人間も道路被害の例外ではなく、高速道路近くの住民は交通事故や大気汚染の被害が大きい。藤井氏は「道路問題には人種差別が埋め込まれている」と指摘する。
林道の80%は未利用、コロナ禍で減少
米国森林局が無計画な伐採で作った林道の80%はあまり利用されていないという。道路を自然に戻すことで菌類の網が復元し、土壌侵食が低減できる。コロナ禍による移動制限は道路生態学における最大の実験であり、ロードキルが大幅に減少した。自然保護か開発かで対立しがちなテーマだが、事故の減少は自動車保険の節約などメリットも多い。サケの遡上を妨げる道路下の細い暗渠を改善すれば、サケ減少への不満も解消されるだろう。藤井氏は「道路生態学の発展を期待したい」と結んでいる。



