岩手大学を中心とする国際共同研究グループは、ネコの尿に含まれる特殊な脂肪酸が、個体ごとに異なる「においの名刺」として機能している可能性があると発表した。研究のきっかけは、ネコが尿のにおいを嗅いだ時に見せる「フレーメン」と呼ばれる口を半開きにした表情だった。
フレーメン反応の分析
一般的にフレーメンは、オスが発情期のメスの尿を嗅いだ時に起こる反応とされている。しかし、岩手大学の宮崎雅雄教授らが、ネコにさまざまなネコの尿を嗅がせたところ、同性の尿に対してもフレーメン反応が見られた。一方、自分の尿に対する反応は少なかった。
さらに、同じネコの尿を5日連続で示すと、においを嗅ぐ時間とフレーメン反応は日に日に減少した。しかし、毎日異なるネコの尿を示した場合、嗅ぐ時間も反応も維持された。これらの結果から、宮崎教授らはフレーメン反応が繁殖相手に限らず、それぞれのネコを判別する際に起きるのではないかと考えた。
尿成分の特定
研究グループは、尿を成分ごとにチューブに分けてにおいを嗅がせ、フレーメン反応があった成分を詳しく分析した。その結果、特殊な脂肪酸である「分岐鎖脂肪酸」が見つかった。全体では、44匹のネコの尿から計13種類の分岐鎖脂肪酸が確認された。
どの分岐鎖脂肪酸がどのような割合で含まれているかは、ネコによって異なっていた。この組み合わせは、採尿日が違っても、室温で24時間置いても、あまり変わらなかった。
宮崎教授は「ネコの尿には、人の指紋のように、異なる組み合わせの分岐鎖脂肪酸が含まれており、それが『においの名刺』として機能していると考えている」と説明している。



