日本テレビ系で放送されたお笑い賞レース「女芸人No.1決定戦 THE W」が、9年の歴史にいったん幕を下ろした。数々の女性芸人を人気者にした一方、「つまらない」という辛辣な評価も受けた。大会の意義とは何だったのか。女性芸人へのインタビューをまとめた「女芸人の壁」(文芸春秋)の著者である西澤千央さんに聞いた。
歴代優勝者は多様、ブレイクの起爆剤に
この大会の歴代優勝者は実に多様だ。応募条件は「女芸人No.1を目指す方」のみ。人数や芸歴、年齢、ジャンルもばらばらだ。「ファイナリストが固定化せず、どんなお笑いが出てくるか分からない面白さがあった」と、西澤さんは振り返る。
優勝はブレイク、あるいは再ブレイクのきっかけとなった。顕著なのが「3時のヒロイン」だ。優勝翌年の2020年、テレビ番組の出演本数の増加数ランキング(ニホンモニター調べ)で上半期トップに。年間でも前年の34本から314本に増え、3位となった。
女性芸人を緩やかに連帯させる効果
男性中心のお笑い界で、今なお女性芸人は少数派だ。同じ賞金額(1000万円)の大会を比較すると、25年のエントリー数は、漫才の「M―1グランプリ」が1万1521組、「キングオブコント」が3449組だったのに対し、「THE W」は1044組。過去最多とはいえ、分母が小さかった。一方で、大会がきっかけとなった好影響も見られ、「孤立しがちな女性芸人たちを緩やかに連帯させる効果が結果的にあった」。実際に、事務所の垣根を越えて女性芸人だけのお笑いライブが増えたといい、「『THE W』で救われた女性芸人は多いと聞く」。
審査の曖昧さと批判
賞レースとしての存在感が増すにつれ、批判の声も目立ってきた。漫才、コント、一人芸など“異種格闘技”だったことから、「全くジャンルの違うものの“面白さ”に優劣をつけることへの矛盾は当初からあった。審査が曖昧な状態で、賞レースとしての盛り上がりに欠けた」。
それを打開する意図があったのか、昨年の大会では、歯に衣着せぬ的確な講評で知られる「霜降り明星」の粗品を審査員に起用。番組最後の「賞金1000万円にしては、レベルの低い大会」という辛口の講評も話題になった。
開催見送りの背景と今後の笑い
今年の「THE W」開催の見送りを、日本テレビは「一定の役割を果たした」と説明している。西澤さんは背景について、「番組当初よりもSNSなどで性差を巡る論争が苛烈になり、とにかく女性を批判したい人の格好の的になりつつあったのではないか」とみる。少数派ゆえにテレビでの表現の場が限られる女性芸人の面白さを発掘したが、女性限定の大会自体が批判の的になってしまった。
「いや、単純に面白くないからでしょ」と思う人へ、自身の面白さの基準を見つめ直してみることを西澤さんは勧める。何に影響を受けて基準が形成されたのか。それを顧みれば、今よりも幅広い笑いを享受できるのではないか。西澤さんは「みんな笑いたいからお笑いを見る。もっと楽しみたいと思うなら、自分の“好み”を一回疑ってみると、笑えるものは増えるはず」と話していた。



