黒木華主演「NORA」スマホで会話投影、クリャービンが大胆演出
黒木華主演「NORA」スマホでせりふ投影、大胆演出

黒木華が主演する舞台「NORA」が7月15日、東京・池袋の東京芸術劇場で開幕した。イプセンの名作「人形の家」を基に、ロシア出身の鬼才演出家ティモフェイ・クリャービン(41)がスマートフォンを活用した斬新な演出を施している。会話の多くがスマホ上でやり取りされ、観客は舞台上に投影された画面を眺めながら物語を追う異色の試みだ。

スマホが生む新たな言語表現

「NORA」は、弁護士ヘルメルの妻ノラが、献身的に尽くしてきた夫から対等に扱われていないと悟り、子供を置いて家を出る物語。1879年の発表以来、父権社会における女性解放を描いた傑作として知られる。黒木は「ノラが妻でも母でもなく、自分自身を取り戻す選択をする。やってみたい戯曲でした」と語る。

クリャービンが本作にスマホ演出を採用した背景には、原作の特性があった。「まず登場人物が少ない。けんかや殺人などアクションがなく、物語が会話で進むので、スマホを使った上演に向くと思いました」。さらに「この数年、言葉より携帯越しのコミュニケーションが増えました。新しい言語が生まれたと言っていい。演出家として、その新たな言語がどのようなものか探究したくなりました」と説明する。

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演出家は原作から必要最小限の会話を抜粋し、スマホに打ち込みながら、作品を掘り下げる役割のスタッフとやり取りして脚色を進めた。「面白かったですよ。大の男2人が『僕の子リスちゃん――』なんていう文を打ち合ったのですから」と笑う。

約50ページの台本に込めた熱量

仕上がった台本は約50ページと薄めだが、黒木は「情報量がすごく多いねって(友人役の瀧内)公美ちゃんと話しました」と明かす。稽古では「携帯がある状況でのノラの感情や環境を探っています」。せりふを話すようにキー操作するのは珍しい挑戦で、「話す時の気持ちに近づけて打っているつもりなんですが、文章で見ると熱量は伝わりにくいですね」と苦労を語る。

本番では、ノラだけでなく他の登場人物のスマホ画面も同様に投影される。「ノラの物語ではありますが、スマホによっていろんな登場人物の感情も見える。お客さんは、どの人の感情も情報も拾えるのが面白いのでは。携帯だからこそ、すれ違いがより明らかになります」と黒木は観客の反応に期待を寄せる。

クリャービンの芸術と国際的な活動

クリャービンは1984年生まれ、ロシアのウドムルト共和国出身。現在は祖国を離れ、ドイツを拠点に国際的に活躍する。叙情的でありながら人間の深奥に切り込む演出で知られ、2019年には全編手話で演じるチェーホフの「三人姉妹」を日本で上演した。9月にはAI(人工知能)を盛り込んだイプセンの「幽霊」をスウェーデンで発表予定だ。

「残念ながら世界は紛争だらけで断絶の危機にある。我々芸術家のやるべきことは横暴から人々を遠ざけることです」とクリャービンは語る。

「NORA」は7月26日まで東京芸術劇場で上演。出演は黒木華のほか、勝地涼、鈴木浩介、瀧内公美ら。問い合わせは電話0570-010-296。

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