天文学者が心打たれた『火の島』—気象学と天文学の信念の共通点
天文学者が心打たれた『火の島』—気象学と天文学の信念

福島県立会津高校を卒業後、天文学者を目指して東京大学理科一類に入学したある研究者は、学生時代に読んだ一冊の本から大きな影響を受けた。それが新田次郎の『火の島』(ちくま文庫、990円)である。

東大時代の厳しい競争と語学習得

当時、理科一類から天文学科に進めるのはわずか7人。同級生は約1000人おり、その中で何人が天文学を志望するか不明だったため、「とにかく成績の『優』を一つでも多く取る」と決意した。数学や物理ではかなわない学生が多かったため、語学で差をつけようと考え、英語、ドイツ語に加えてフランス語、中国語の授業も履修。さらに民族学も学び、幅広い知識を身につけた。これは石田五郎の『天文台日記』を読み、天文学者には多様な教養が必要だと理解していたからである。

旅行と鉄道エッセイへの傾倒

旅行好きで北海道や四国を巡った経験から、宮脇俊三の『時刻表2万キロ』などのエッセイも多数読破。小説では新田次郎作品に夢中になり、直木賞受賞作『強力伝』をきっかけに学生時代だけで30〜40冊を読んだという。

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『火の島』が与えた衝撃

中でも特に印象に残ったのが、東京・伊豆諸島の鳥島観測所を舞台にした『火の島』。鳥島は台風観測の最前線だったが、1965年に火山爆発の危険が迫り観測所が閉鎖を決断。史実に基づき、死の恐怖と観測使命の間で揺れる所員の緊迫感を描いた傑作である。

「気象学と天文学の職務に対する信念は似ていると感じた。日常の現象を後世に伝え、将来に生かす——それは命がけのこともある。そこに魅力を感じた」と研究者は語る。

天文学への応用

天文学でも、天変が起きれば東西を問わず誰かが記録してきた。17世紀のイギリスの天文学者エドモンド・ハレーは、過去の記録から約76年周期で現れる彗星の存在を発見し、次回出現を1758年と予言して没した。「ハレー彗星の出現が予測できるようになったのも先人の積み重ねだった」。分野は違えど、『火の島』から天文学に通じるものを学んだという。

努力の結果と後輩へのメッセージ

入学後の努力が実り、無事天文学科に進学できたが、「結局、希望者全員が入れたので苦労する必要は全くなかった」と笑う。それでも「時間に余裕のある時に興味の幅を広げ、いろいろな分野に熱中したことが、天文学者になった後も役立ちました」と述べ、若い時の勉強が無駄になることはないと強調した。

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