「事実」を問い直す3冊:筑紫哲也、格差、パンダのうんこ
「事実」を問い直す3冊:筑紫哲也、格差、パンダのうんこ

「事実」ということばは日常的に使われるが、その本質は意外に捉えがたい。組織開発専門家の勅使川原真衣氏が、この問いに向き合うための3冊の文庫本を紹介する。

『筑紫哲也「NEWS23」とその時代』:報道現場の葛藤

金平茂紀著の本書は、筑紫哲也がキャスターを務めた「NEWS23」の報道現場を中心に、その足跡を描く。勅使川原氏によれば、ここでの「事実」は中立を意味しない。権力を監視し、生身の生活と人権を守るための葛藤が描かれており、ときに煙たがられることもあるという。

『ゆるふわ天上人と地底人』:格差という痛み

ヒオカ著の本書は、格差という「事実」を自己責任で括らせない。持てる者には見えにくい段差を、著者自らが見上げた先に映る「事実」とは何か。統計以前に“なかったこと”にされた痛みそのものを描く。

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『パンダのうんこはいい匂い』:規範を緩める視点

藤岡みなみ著の本書は、旅、異文化、日常の描写を通じて、“かくあるべし”という規範を鋭くも軽妙な筆致で緩めていく。勅使川原氏は、このような大らかな網目で世界を掬うことも、「事実」の追求に他ならないと述べる。

事実の多面性を受け入れる

人は誰しも、「事実」をよく見ようと近づくほど、自分の立ち位置から見たいものだけを見てしまう癖がある。しかし、このバラバラな3冊が教えてくれるのは、それでいいのだということ。事実はいつもシャープで整えられた代物ではない。自分の足で近づき、自分のことばで引き受ければよい。緩急つけながら、鳥の眼蟻の眼で見ることが大切だ。

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