サマージャンボ宝くじに、1等と前後賞を合わせて史上最高額となる12億円が登場した。このニュースに対し、宝くじを「愚か者の投資」と冷笑する声も少なくないが、消費経済ジャーナリストの松崎のり子氏は、宝くじの本質を「エンタメ費」と捉える視点を提示している。
宝くじにまつわるネガティブな声
近年、宝くじに対する否定的な意見が目立つ。特に若い世代の間では、1等当選確率の低さや、売り上げの約半分しか賞金として還元されないこと、長蛇の列に並ぶ時間の無駄など、経済合理性の観点から批判されることが多い。こうした背景から、宝くじを買う行為そのものが「愚かな選択」と見なされる傾向が強まっている。
実際、確率的には極めて困難だ。例えば「プレミアム」の1等(8億円)は4000万枚に4本、つまり1000万枚に1本の割合でしかない。前後賞を含めた12億円を狙う場合、多くの人が10枚セットで購入することを考えると、その確率はさらに低くなる。松崎氏がAIに試算させたところ、プレミアムが年2回発売され、毎回10枚ずつ購入した場合、10年で12億円が当たる確率は約5万分の1、30年で1.6万分の1という結果が出た(ただしAIの計算は参考程度としている)。
経済合理性を超えた価値
さらに、プレミアム1枚500円で10枚購入すると5000円。年2回、10年間買い続けると総額10万円、30年で30万円になる。この金額を投資に回せば無駄にならないという意見もある。しかし松崎氏は、「もし12億円が当たったら」という妄想を楽しむこと自体に価値があると主張する。
12億円もの大金が手に入れば、ストレスのある仕事を続ける必要はなく、住宅ローンも即完済でき、高級時計や別荘などの贅沢品を購入してもなお10億円が残る。この非現実的な夢を5000円で買えるのだから、エンタメ費として十分に価値があるという。
競馬やパチンコとは異なり、宝くじは「賭けた分を取り返そう」という心理が働きにくい。リターンが非現実的だからこそ、純粋に夢を買うエンターテインメントとして楽しめる。松崎氏は「宝くじに払うお金は、賞金を求めてではなく、とびきり幸せな人生を妄想する時間に対する対価」と述べている。
現代の消費行動と宝くじの位置づけ
現代では、推しのイベント代などにも5000円以上かかることは珍しくない。映画1本2200円で2時間の楽しみに対し、宝くじは購入から抽選日まで長期間にわたって妄想を楽しめる。その点で、宝くじは決して不合理な投資ではなく、むしろコストパフォーマンスの高いエンタメと言えるかもしれない。
松崎氏は、宝くじを「愚か者の投資」と断じる前に、そのエンタメ性に目を向けるべきだと提案する。経済合理性だけで判断するのではなく、夢を買う行為としての価値を再評価する視点が求められている。



