島根県出雲市斐川町の出西地区で、「幻のショウガ」と称される出西しょうがの収穫が最盛期を迎えている。栽培の歴史は約400年あり、この地区でしか育たないことが幻と言われる理由だ。かつては大名への献上品として重宝された。
厳しい暑さと熱中症搬送5百人超
今年4月、最高気温40度以上の日を指す「酷暑日」が天気予報の用語に追加された。この夏の県内は酷暑日には至らなかったものの、大田市では8月7日に全国で最も高い39.6度を記録するなど、厳しい暑さに見舞われた。消防庁によると、県内で5月1日から9月13日までに熱中症で救急搬送された人は590人(速報値)に上った。
暑さに耐えかねた記者が涼を求めて訪ねたのは、出西しょうがを育てている田口裕一郎さん(56)だ。田口さんは2024年にハウス栽培を始めた。農業と食に関わる人々を応援する企画「農ぱーそん」で紹介された。
ハウス内は熱気とショウガの香り
収穫期の7、8月に田口さんのハウスを訪れると、熱気が体を包み込むとともに、ショウガの香りが鼻を抜けた。収穫作業を撮影していると、背中がじんわりと汗ばみ、額からも汗が流れてくる。「ここでは、ファン付きの作業着がないと生きていけない。記者さんも買ったほうがいいよ」と田口さんがほほえむ。
取材後、田口さんの出西しょうがで作ったジンジャーエールをいただいた。冷たくて、爽快なのどごしが暑さを一気にはねのけた。
一番おいしい食べ方は「そのまま」
田口さんに一番おいしい食べ方を尋ねると、「そのまま『ボリッ』とかぶりついてほしいですね」と話した。後日、半信半疑でかぶりつくと、「シャキッ」とする歯ごたえで、一気に辛みが口に広がったが、ずっと辛いわけではなく、後味にさわやかな風味が残った。「キレのある辛みとはこのことか」と納得しつつ、手を加えない食べ方を勧めてくれたことに、おいしさに対する田口さんの自信がうかがえた。
温度調節機能や散水機器を備えるハウス栽培は管理がしやすく、今後の出西しょうが生産において期待が寄せられている。今年から2人の農家が田口さんの後を追うようにハウス栽培を始めた。農家の情熱と努力で伝統とおいしさを守り続けてほしい。これ以上の暑さは勘弁願いたいが、あの涼味に触れられるなら来夏も楽しみだ。(辻楓)



