一部の企業で出社回帰の動きが活発化している。しかし、いざ社員が顔を合わせても、コミュニケーションの取り方は以前より難しくなっている。コンプライアンス意識の高まりもあり、仕事以外の交流を避ける人は少なくない。
その解決策として、ホテルや飲食店の宴会場などで社内イベントや懇親会を企画する人事総務部が増えている。ただし、経理のルールによっては、飲食店ごとにベンダー登録などを行わなくてはならず、企画する側の負担は重い。そこで注目されているのが、オフィスで行う「社内懇親会」だ。
わざわざ外に移動する必要がないため、業務終了後にふらっと参加できる。おいしい食事や目新しいおつまみなどを用意できれば、満足度も高まるだろう。企画する際に強い味方になってくれるのが、中食総合事業を手掛けるCqree(シークリー)のケータリング特化のポータルサイト「ケータリングセレクション」だ。
この記事では、ケータリングセレクションの導入事例などを取り上げつつ、社内懇親会は「出社したくなる会社作り」にどのくらい効果的なのかを探っていく。
社内懇親会の需要は年150%ペースで拡大中
Cqreeの藤田英敏氏(取締役 ケータリング事業部長)は働き方の変化をこう見る。「個人としてはリモートワークの方が効率的だと思うが、会社全体としては『出社させた方が生産性を最大化できる』と判断する企業が増えている。出社回帰の流れは確実にある」
出社を促すきっかけとして食事がよく使われるが、昨今の宴会のスタイルは変わった。宴会を企画すると「飲み会に残業代は出るのか」などの声が上がり、飲食店の宴会場を借りる形は敬遠される傾向がある。そのため、会社に食べ物を持ち込む手軽なスタイルが広まっている。コロナ明け以降、Cqreeが扱う社内イベントの需要は、年150%のペースで伸び続けているという。
「オフィスで懇親会」のメリットとは
飲食店を使う従来の懇親会と比べて、オフィスで行う懇親会のメリットはどの点にあるか。藤田氏がまず挙げるのは移動と参加率だ。わざわざ移動して、時間を合わせてスタートする必要がなくなる。社内なら業務が終わり次第合流可能で、乾杯だけしてすぐ業務に戻れる。
「従来の居酒屋などで開かれる会は、酒を飲む層や夜の時間に余裕がある層に参加者が偏りがちで『全員が参加しやすい』とはいえない環境だと思う。オフィスで開く懇親会なら社員全員が参加しやすい。社内スペースなどを利用することで、帰属意識を高める場としても活用できることに最大のメリットがある」
セキュリティの事情もある。「飲み会の帰りにPCを紛失した」というインシデントを避けるため、PCを持ったまま飲みに行くことを禁じる社内規定がある会社も存在する。社内で完結する懇親会なら社内にPCを保管できる他、機密情報を含む話が外に漏れる心配もない。
献立の面でも融通が利きやすい。健康維持や宗教上の観点などから一部の食品を避ける人が職場にいる場合がある。食事を自前で手配する社内懇親会なら、ベジタリアンやビーガン、グルテンフリーなどに対応した料理も用意できる。全員が同じ場所で食べられる献立にすることで、参加率はさらに上がる。
ケータリングセレクションの人気店舗「BALNIBARBI CATERING」の料理イメージ(提供:Cqree)
懇親会のマンネリ化を回避するには
社内懇親会を始めたものの、回を重ねるごとに参加者が減っていく……そんなケースもあるだろう。藤田氏はその原因の一つとしてマンネリ化を挙げる。「唐揚げやポテトなど定番の料理は食べる前に味が想像できてしまいます。いつも同じ献立では『ああ、またやっているな』で終わってしまいます。会社の延長線ではなく、多少の非日常感や空間演出まで設計できれば、興味関心を持ってもらえる」
もう一つの原因が事務の負担だ。店舗ごとにベンダー登録するのは現実的でなく、事務処理だけでも手間がかかる。物品搬入のセキュリティが厳しいオフィスビルもある他、ホットプレートやウォーマーを使う際の配線系統、工事申請書の提出など確認事項は多い。このような雑多な業務はなるべく回避したいものだ。
こうした課題に対するCqreeの答えが、ケータリングセレクションだ。さまざまなケータリング事業者の料理を手配できるサービスで、提携店舗は全国300店舗以上。札幌や仙台、東京、名古屋、広島、福岡などの主要都市を中心に展開しており、全国の各拠点において同水準の懇親会を開催できるように支援する。
ひと口にケータリングと言っても範囲は広い。デリバリーのように料理を届けるのみの手軽な「オードブル型」と、スタッフが会場で料理のセッティングからテーブル装備、サーブまで対応する「出張パーティー型」があり、後者は商品発表会から数千人が集まる国際会議のイベントまでカバーする。
Webサイトでの注文だけで完結させない点が同社のこだわりだ。Webサイトの情報だけでは、本当に見た通りのものが届くのか、発注側には不安が残る。そこで同社は専任の担当者がメニューから会場レイアウト、当日の流れまで細かくディレクションする。「訪れてよかったと思われるような、専任担当者による細かいディレクションがわれわれの強みだ」
事務の負担を軽減するため、複数店舗に依頼する場合でも請求は1件に集約され、ベンダー登録も同社のみで完結する。ビルごとの搬入事情もCqreeが把握する。
人事総務の負担を減らす仕組み
事務は毎年変わるのが常で、手配の勝手が分からないことに悩まされがちだ。Cqreeは企業ごとの過去の対応実績を蓄積しているため、事務が交代しても前回の内容を踏まえて会を組み立てられる。東京と大阪など別地域で同時開催する場合も、東京の予算と内容に合わせて大阪の会を同じ水準でディレクション可能だ。
20社以上のグループ企業を抱えるある企業は、ベンダー登録などの事務作業をグループとして一括でまとめ、事業者を変えるたびに発生していた手続きをなくした。社内ホールの有効活用とエンゲージメント向上を図る別の企業は、懇親会だけでなく平日の夕食手配まで一括で運用し、運用の手間を減らしながらホールを日常的なコミュニケーションの場に変えた。
料理のマンネリ化に悩んでいた企業は、人気が高い定番のメニューは残しつつ、旬の食材の入れ替えとテーマを立てた企画で変化をつけた。夏は屋台を組み、カフェスペースにかき氷やちょうちんを飾った「夏祭り」をテーマにした。新年会は、おせちをよりグレードアップさせた創作料理に組み替えた。
創立10周年のような企業の節目を祝うイベントでは、ロゴ入りのマカロンやドリンク上にロゴを浮かべた乾杯用カクテルを用意する。内定式は、二次元コードを印刷したクッキーを土産に配り、読み込むと社長のあいさつが現れる仕掛けを作った事例もある。
業種や社風を問わず共通して喜ばれるのが、マグロの解体ショーだ。生の本マグロを使うので、味も格別だという。50キロの個体では1人3~4切れで約100人分になる。規模の大きい社内イベント向きの企画で、3週間前に手配する必要がある。水揚げ場所を変えることで一年中対応できるという。
マグロの解体ショーの実際の様子 先ほどの料理の写真と同一店舗にて手配(提供:Cqree)
「社内懇親会の狙いは、整いの先にある。『この部署にこんな人がいたのか』という新しいコミュニケーションが生まれて、最終的に生産性を向上させられるかどうか。整ったらこっちのもので、その場の下にわれわれが存在できればいい」
IT企業ではどんな社内懇親会が人気なのか聞いた。運営を担当する藤田氏によると、エンジニアにはローストビーフや手巻き寿司などのメニューが人気だという。クオリティーの高い定番料理を下さえつつ、ピンチョスなどの創作系を交ぜて趣を加える構成が定番だ。外資系のIT企業は外国人社員が多く、フードダイバーシティーへの配慮に加えて「プラスチック容器をなるべく使わないでほしい」という依頼が目立つ。
利用の場面は懇親会にとどまらない。研修やセミナーの合間に、バリスタが入れるコーヒーとフルーツ、サンドイッチを差し入れるなどのリフレッシュメントの手配もできる。また、1日かけて開催するイベントや複数日にわたる合宿でも、昼食用の弁当からビュッフェ、ブレックタイムのスイーツ、夜方の懇親会ケータリングまで、イベント全ての食事手配を一括サポートしてくれる。
レセプションなどゲストの方を招く歓談や名刺交換がメインの会では、箸やカトラリーを使わずに食べられるフィンガーフードのみのプランも用意可能。手数が多く社内の和気あいあいとした雰囲気の会に好まれるような、酒や食事のボリュームを重視した内容にも調整できる。
人気メニュー・ローストビーフのLIVEカットの様子 目の前で切りたてで提供(提供:Cqree)
利用シーンや予算に合わせたオリジナルな提案を強みとし、利用者の希望に合わせてプランニングを行っている。「派手な演出に頼らずともその場に最適化した料理を提供することで、参加者に心から楽しんでもらえるよう工夫を凝らしている」
クリスマスと重なる2026年の忘年会シーズン
秋から冬にかけては社内忘年会の需要も高まる。藤田氏は「2026年はクリスマスと忘年会の時期が重なる。忘年会向けのプランに加えて、クリスマスをテーマにした懇親会にも使えるオードブルのプランも豊富に用意する予定だ」と話す。
Cqreeのプランの特徴は選びやすさにある。福利厚生の予算として1人当たり月額5000円という上限を設ける企業が多い。そのため「5000円で定番料理と飲み放題が収まるプランを豊富に用意する」と藤田氏。
年末企画向けの特集ページは、秋から冬にかけてWebサイトで順次公開する予定だ。注文は、スタッフ付きの会なら10日前、料理のみの配達なら3日前ごろまで相談できる。年末ぎりぎりに事務を任されても間に合わせられる可能性がある。
事務の負担を増やさずに、社員が楽しみにする食事の場をオフィスに用意する。「出社したくなる会社」への一歩は、そこから踏み出せる。



